劇場公開日 2012年10月20日

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「微妙な気持ち」希望の国 CRAFT BOXさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0微妙な気持ち

2014年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

東京電力・福島第一原子力発電所の事故の影響によって、福島はもとより、日本中で「分断」が明確に見られるような社会になった。それは、震災以前から起きていた事ではあるのだが、それ以降、より鮮明になったという事だろう。
映画の中で、一本の道に杭が打たれ、そこで避難に関する分断が起きる。家族も分断される。差別される側と差別する側の分断もある。放射能への影響に対する意識の分断は、家族の中でも起きる。映画でそうした「分断」を挑戦的に描いたことについては、評価したいと思う。また、この時点で震災を真っ正面から取り上げたフィクションを作った事もついても、意欲的で評価したい。

ただ、作品全体としてはどうしても薄っぺらい印象だった。正直、数年後には、筆者にはこの映画の事が何も残らないだろう。いま、日本社会で福島第一原発に関して起きている様々な出来事は、こんな薄っぺらいものではない。いくらフィクションとしても、もう少し何とかならなかったのかと感じてしまう。『ヒミズ』では、震災直後だった事もあり、無理矢理入れた感があったのは仕方ないと思っていたが、園子温監督だけに期待した分、改めて作ったものがこの程度なのかと期待はずれだった。現段階で作るからこその意味があったのだろうが、今後、様々な監督達が震災に向き合った作品を創るときは、もう少し落ち着いてしっかりした作品を期待したい。この作品で、震災について(あるいは、それにまつわる様々な社会現象について)考えてくれる人がいるならば、それはすごい事だと思うし、前述した通り、表現者の社会的役割として園子温監督が自覚的にその役割を担った事は評価したい。

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CRAFT BOX