劇場公開日 2012年2月17日

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「とにかく色々惜しい」TIME タイム よねさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0とにかく色々惜しい

2018年12月18日
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鑑賞方法:VOD

非常に惜しい。不死が実現した世界では残り寿命が通貨として流通してるというアイデアは確かに面白いし、25歳から人間は歳を取らず貧乏人は早死にし富裕層は事故ったりしない限りいつまでも生きられるので老人がそもそもいないというアイデアはベテラン俳優をキャスティングする必要がないので低予算で撮れるというメリットもあって、未来の車が何故か中古のムスタングというのもおいしい。

しかし見た目25歳で実際は老人の人が寿命が尽きてポックリ逝くのは解りますが、実際は26歳の人間も同じように死ぬのは納得いかない。大切な労働力をみすみす殺す意味があるのでしょうか。あと寿命が通貨であるならば寿命が容易に奪われないようなセキュリティがあるべきなのに金持ちも貧乏人も何ら盗難対策なしに全財産持ち歩いてるって、Suicaに全財産チャージして歩いてるようなもんで不用心にも程がある。

「人間は不死であってはいけないんだ」と啖呵を切る主人公が倒そうと目論むべきはそういう不死を可能にし人間を管理するシステムそのものであるべきなのに、やってることが金持ちから寿命を奪って貧しい人に分け与えるという単なる石川五右衛門イズムで、人類の命運をガッツリ握ってる神にも等しい存在である本当の悪党は姿も見せないしどこで何してるかも判らんのでは『マトリックス』3作目と全く同じ消化不良を起こします。

勝手な想像ですが、監督のアンドリュー・ニコルは日本のアニメが好きなんじゃないでしょうか。オープニングシーンのイメージや寿命のカウンターが腕にあるってのは細井守版『時をかける少女』っぽいし、富裕層が独占する不死って、それはモロ『銀河鉄道999』、思わせぶりに語られながら途中でどっかに行ってしまった主人公のお父さんの話とかお母さんとの死別とかモロにそれ。きっとハーロックやトチローやエメラルダスや黒騎士ファウストも出したかったけど止められたんじゃないですかね、そういう意味でやっぱり惜しい。フィルモグラフィを見る限り設定ガチガチのハードSFじゃなくて奇抜な設定を土台にしてドラマを作るタイプの人っぽいんで、いっそ真正面から実写版999を作って欲しいと思います。

結局綺麗事で終わっていてニューシネマ風のオチも蛇足に見えてしまうのも残念。元々はもっと面白い脚本だったんじゃないのかなとも思います。要所要所に配された全く回収されない意味深な台詞がその痕跡じゃないかと。とにかく色々惜しい、もったいない。

よね