劇場公開日 2011年11月26日

「俺に触ると・・・〇〇するぜ!」ホーボー・ウィズ・ショットガン ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0俺に触ると・・・〇〇するぜ!

2012年6月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

本作が劇場映画初演出となるカナダ発の映画監督、ジェイソン・アイズナーが、不朽のカルトSFムービー「ブレードランナー」で強烈なインパクトを残したルトガー・ハウアーを主演に迎えて送る壮絶アクション作品。

自らの頭に思い切り叩き付け、派手に割れるガラス瓶。その妖しく光る「切れまっせ」な鋭さが満ち満ちる瓶の欠片を手一杯に掴み取り、男は笑顔で噛み砕いた・・・。思わず、目を背けてしまいたくなる痛々しさと、絶望が支配する描写である。

だが、観客はその真っ赤な血に染まる男の笑顔から目を離せない。威圧、殺意、美しさ。初老の老人の枯れた魅力とは明らかに違う、男性の色気がプンプン香る、その青色の瞳。こいつ、危ないぜ。

壮絶なバイオレンス描写。その遠慮無しの殺戮ワールドが立て続けにぶっ放たれる世界観に、大きな注目が集まった本作。

確かに、日本、アメリカ、どこか中南米な香りがする要素を思いつくままに混ぜ込み、鮮血乱れ飛び空間がそこにはあり、ちょっと覚悟をもって向き合わなければ「胃のむかつき」に勝てず、明日にはパン〇ロンがお友達!な残酷さに打ちのめされる。

しかし、中盤まで必死に物語に食らいつき、ヴァイオレンスの極地に体を馴染ませていくと、その完成された美学と構築されたバランスの端正さに目を見張る。往年の名作、ジョージ・A・ロメロ「ゾンビ」にあった死体のパズル、空に浮かぶアンナモノ、コンナモノ。

そして、本作を彩る一番の奇跡こそ、主演を演じるルトガー・ハウアーの魅力である。白髪が生え、若き日のギラギラした情熱こそないが、映画黄金時代の名作を支えた存在感、インパクトはいまだ健在。「俺に触ると、脳みそ飛ぶぜ!」画面に漂う、闇、個性、力強さ。まさに、この男があってこその最高にシャープな冒険活劇として完成していると言っても良い。

とはいえ、そこは大人推奨のエログロ作品。それなりに節度をもって鑑賞の舞台を考えてほしい映画だ(デートでは、絶対に選んではいけない)。本当にクールで、セクシーな一本を求めている映画好きの貴方にこそ、この作品は、微笑んでくれるだろう。至福の喜びを、お約束しましょう。

ダックス奮闘{ふんとう}