劇場公開日 1983年7月16日

「タイムトラベラーは自分のことだったのです」時をかける少女(1983) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0タイムトラベラーは自分のことだったのです

2021年1月6日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

「時をかける少女」とは誰のこと?
もちろん原田知世の演じる芳村和子です

しかし実は他にもいたのです
それはあなたのこと
私達観客自身のことでもあったのです

大昔観た時は、なるほどアイドル映画だ
ポップでキッチュな映像表現だとぐらいにしか理解できませんでした
そんな風にほんのうわべだけしか、本作の意味を理解できてきなかったのです
本当の意味なんかその時にはまるでわからなかった

40年近い年月が過ぎ去って本作を観る私達
それはタイムトラベラーです
アルバムの写真をくるかのように自分の過ぎ去った思い出の一コマ一コマが映画と一緒に私達の脳裏で遡っていくのです
チープで昭和ぽいといわれるタイムリープの映像は実はそれを表現していたのです

原田知世は当時15歳
大林監督は46歳
つまり一世代違うのです
大林監督は主人公の芳村和子を大正ロマンの少女として理想化したと特典映像で語られておられてました

つまり大林監督は自らの青春時代へタイムリープして、その理想の少女を現在に持ち込んでみせたのです
それがタイムトラベラー原田知世です

そして21世紀
同じように私達はタイムリープして、自分たちの青春をもう一度くりかえせるのです
永遠の4月18日なのです

大林監督は意図は、今やっとわかりました
長い間、本作をなかなか再度観る気になれなかった理由もわかりました
本作とともに青春が閉じ込められていたからです
不用意に観て時の迷い人、時の放浪者になりたくなかったからです

カーテンコールの歌唱シーンで涙腺が決壊しました
果てしない時を経て、ここに戻ってきた
自分が忘れていた青春はここにあった
絶対に忘れないと誓ったことも何もかも忘れ去っていたことを今思い出したのです

タイムトラベラーは自分のことだったのです

大林監督やっとわかりました
ありがとうございました
安らかにお眠り下さい
自分もタイムリープできました

あき240