劇場公開日 2012年6月15日

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「異なる美と美のせめぎ合い!」スノーホワイト 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0異なる美と美のせめぎ合い!

2012年6月16日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

興奮

えっと……皆さんが言うほどヒドイですかねえ、この映画?
他の方のレビューを読んでたら凄〜く不安になってきた(笑)。

過去作とビジュアルに大差がない?
確かに傑作『指輪物語』を連想させる部分等は多々あった。
けど『指輪〜』以降、似たような映像表現の作品はワラワラあった訳で、
今になって比較されて評価を落とされるのはなんか不遇な気がする。

物語を詰め込み過ぎ? 確かに。
終盤、主人公が戦いを決意する動機は不明瞭。
ハンツマンとウィリアムの関係や決着ももっと描いて欲しかった気がするし、
その他の人物描写も薄味。

だが本作、エンタメに徹しつつも映像美を感じる部分は多く、
開幕から終幕まで、白・黒・赤・金が映える映像は見事だ。
そして独自性を感じさせる設定も多い。
ずるりと溶けるブロンズの鏡。
メッセンジャーとして現れる白黒のカラス。
樹木と殆ど一体化したトロール。
怪物と化す黒い硝子。
タールの如く粘るラヴェンナのマント。

特に面白いのは、人の不安を糧にする黒い森の短くも濃密なビジュアル。そして、
スノー・ホワイトを救い主として受け入れる森の動植物たちだ。
小動物も草木も、幻想的でありながら十分な現実味も感じさせ、
美しさの中に1割程度のグロテスクが加味されたような絶妙なデザイン。

そして、主役2人の魅力。
氷のように冷たく美しい女王ラヴェンナ。
若さを保つ為、若い娘の血で満たした風呂に浸かったという
実在の殺人者エリザベート・バートリを連想した。
さすがに血の風呂は登場しなかったが、石膏のような液体からせり上がる彼女は無機質で不気味。
一方で、常に“美”に追い回されているような焦燥と恐怖の表情が憐れだった。

ラヴェンナが『美しくなければ世界に棄てられる』
という強迫観念に駆られていたのに対し、
スノー・ホワイトは生き延びる為には汚泥や血に塗れる事にも躊躇しない、
いわば生命の美とでも呼べそうな美しさを有している。
森の生き物が彼女を受け入れたのも、彼女が
彼等と同じ生への渇望に満ちていたからかも、なんてね。

僕は作品が『物語に重きを置いてない』と感じたら
物語の整合性とかは割とアッサリ無視して観られる人間でして、
むしろ『この内容を2時間足らずでそつなくまとめたなあ』と感じた位だ。
個人的には贅沢なビジュアルと、異なる“美”の対決を最後まで楽しめた訳で。
大満足の4.0判定!

<2012/6/16鑑賞>

浮遊きびなご