劇場公開日 2012年1月28日

「次は、貴方の番だ。」麒麟の翼 劇場版・新参者 ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0次は、貴方の番だ。

2012年2月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

「いま、会いにゆきます」などの作品で知られる土井裕泰監督が、最新作「テルマエ・ロマエ」で全く違和感のない古代ローマ人を演じる阿部寛を主演に迎えて描く、人情ミステリー作品。

テレビドラマ「新参者」で、高い人気を獲得した東野圭吾作品のキャラクター、加賀恭一郎。これまでにも、数人の役者が演じてきた異色の刑事だが、原作者が「一番、自分のイメージに合っている」と語るのが本作の主演を務めた阿部寛だ。

ベストセラーの原作、キャラクターを的確に体現する役者、阿部寛の登場。その二つがそろって初めて、本作を製作する覚悟が出来たのだろう。「映画だから、見せ場をドカーンと作りまっせ」と、不可解なアクションシーンや遠景だけの海外ロケカットを鼻息荒くぶち込むことなく、極めてシンプルに(言い方を変えれば、地味に)2時間強の物語を手堅くまとめた。

映画「ハナミズキ」で、女優新垣結衣の可憐さと意志の強い眼差しを掬い取った作り手は、本作でも彼女を起用。触れるだけで壊れてしまいそうな繊細な魅力と、阿部のいくら叩いても逆にはね返されそうな頑丈さの対比がストーリー全体にユーモアと軽快さを与え、作品としての個性を支えている。

骨太、硬派なミステリーを期待する男性観客向けというよりは、溝端、松坂、阿部のイケメン軍団で目の保養がしたい女性観客をターゲットに据えた映画という趣向が強い。凄惨な殺人描写もないので、幅広い世代の方々が安心して見られるという味わいは、さすがの娯楽映画の名手、土井の才気がなせる技だろう。

冷静さと、人間らしい暖かさを併せ持つ刑事、加賀恭一郎の活躍を描く東野圭吾原作は、まだ数本ある。さあ、映画人よ、この人情刑事はスクリーンに飛び出すタイミングを今か、今かと待っている。

次は、貴方が使う番だ。

ダックス奮闘{ふんとう}