劇場公開日 2011年8月6日

  • 予告編を見る

「自らの血で自らの血を洗う惨劇のループに酔う不思議な快感」トライアングル 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自らの血で自らの血を洗う惨劇のループに酔う不思議な快感

2011年9月28日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

幽霊船を想わせる不気味な舞台にて忍び寄る正体不明の殺人鬼に襲撃される展開はありきたりだが、今作の大きな注目点は、殺人鬼の正体は、被害者の1人であるハズのジェス本人であり、血の惨劇が幾度も幾度も繰り返されるシチュエーション・スリラーの要素が色濃くなっていく点である。

なぜ、彼女が凶行に走ったのかが徐々に明らかになるループに酔っていく不思議な感覚は、最後まで観客の胸をざわつかせ飽きさせない。

一回目の乗船シーンで挿入されていた不可思議なカットや不可解な言動が、輪廻するに連れて、恐怖に繋がる前フリだったと気付き、驚くのと同時に妙な快感を覚えた。

なぜ、皆殺しにするのか?
船の正体は?
いつまで繰り返されるのか?
現実なのか?
それとも悪夢なのか?
どの謎も真相は解明されぬまま突き離す結末に面食らってしまったが、胸中に残す後味の悪さこそ妙な快感そのものなのかもしれない。

では、最後に短歌を一首

『帆を(頬)えぐる 悪夢と嵐 血の対峙 廻る船出は 仮面の重なり』

by全竜

全竜