劇場公開日 2011年8月27日

  • 予告編を見る

「陳腐なセットと、物足りないドロドロ感」ハウスメイド マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5陳腐なセットと、物足りないドロドロ感

2011年9月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

豪邸を持つ富豪を描くのに、やたら多いガラスと鏡、銀の食器と高級ワイン、主人自ら弾くピアノにクラシックを奏でるオーディオというセットではあまりに陳腐で失笑する。上流階級の生活に対するイメージがこれしきのものとはチープすぎる。
メイドのウニが妊娠したと知るや、妻のヘラと母親がウニの流産を画策するといったストーリー共々、作風が30年前の大映ドラマか、はたまた40年以上も前の昼メロのような古臭さ。ひょっとして、こんなノスタルジックさに郷愁を感じるのが韓流ファンなのか?

ウニを手に入れた主人フンが、まるでこの世のすべてを手中にしたように両手を広げ肉体を誇示した場面には失笑どころか引いてしまった。
だいたい、ウニの妊娠にまつわるドロドロ・ゲームは女たちの欲と憎しみが渦巻き、男であるフンは蚊帳の外なのだ。両手を広げている場合ではない。
そのドロドロ・ゲームにしても、もっとエスカレートするのかと思いきや、意外に大人しくて拍子抜けする。やるならもっと徹底的にやってくれないと物足りなくて面白くない。

いよいよウニの反撃というラストも、何やってんだか、あまりにもあっけなくて呆然。主人に従順でややテンネンっぽいウニが、ここぞと復讐に燃える魂を宿した表情になっても、その復讐の手段はまったく意味不明だ。
古株のメイド、ビョンシクがウニに白羽の矢を立てた本当の理由は何か? そして、ウニの太股に残る火傷の痕の意味するものは? 派生させたらもっと興味津々の上流社会暴露話になっただろうに。

ウニを演じたチョン・ドヨンは表情が豊かで色気もあるが、友人のおデブちゃんや古株メイドの下着姿まで披露するとは、この作品はなんでもありか? 若妻ヘラも負けていない。臨月のお腹を突き出しながらボーヴォワールの「第二の性」を読み、夜は夫にオーラルセックスで奉仕する。
だったらいっそのこと、ヘラの母親も娘の立場を確固たるものにするため、自らもフンに身を捧げるぐらいのサービス満載にしてほしいものだ。
ラストの何事もなかったようなシュールな映像で、少女ナミの行く末だけを案じて観終わった。

ウニを演じたチョン・ドヨンの魅力と、日和見でその場に応じた策謀を巡らし屋敷を牛耳るしたたかな老メイド役ユン・ヨジョンの演技がなかったら、間が持たない作品。

マスター@だんだん