劇場公開日 2011年1月29日

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「後半の展開が、雑になっていくのが残念だが、REDたちの年齢を感じさせない活躍ぶりは、意外性もあって楽しめる。」RED レッド 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0後半の展開が、雑になっていくのが残念だが、REDたちの年齢を感じさせない活躍ぶりは、意外性もあって楽しめる。

2011年3月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ちょっとレビューを書くのを忘れていました。
 年配の人を中心に、本作がヒットしているようです。普段映画館に足を運ばなくなった中高年の人でも、自分が知っている往年のスターが多数出演している作品なら、ついつい見たくなるのかも知れません。

 演出は単純でシンプルながら、ガンガン爆破シーンやガンアクション、カーチェイスが続く、ハリウッドのアクション映画の王道をいく作品でした。注目は、なんといってもブルース・ウィリスとモーガン・フリーマンの共演。やっぱりトップスターの共演だけに風格があります。
 触れ込みは、新旧スパイ対決。ロートル組は知識と経験。現役は、ハイテク技術を屈指してとのパターン化されたコピーが踊っていましたが、なかなかどうして爺さまたちもハイテクを使いこなしていました。

 元スパイに現職スパイが問答無用に襲いかかるという話では、『バーン・ノーティス 元スパイの逆襲』が似ていると思います。しかしテレビシリーズの作品と比べて、アクションのスケールが違います。冒頭からして、フランクの自宅が襲撃されるシーンは、家が半壊するほどの銃撃で、激しかったです。そのあとフランクが逃げ惑うシーンでは、車が何台も宙に舞う迫力。この辺は、まさに映画ならでは醍醐味ですね。

 『バーン・ノーティス』と決定的に違うのは、大胆にもCIA本部に乗り込むところ。とにかく逃げないのです。『ハリポタ』前編がヒットしなかったのは、主人公たちが逃げ回ってばかりだったからだと思います。『バーン・ノーティス』もそれなりに戦って撃退していますが、さすがに本部には乗り込んだりしません。
 本作では、何故CIAが自分たちを襲うのか、その秘密を探ることがメインストーリーになっています。それを一気に「本丸」で情報収集してしまうのが、REDたちの面目躍如といったところでしょうか。でも、CIAは最新のセキュリティでガードされています。しかし、とうにスパイを引退したはずの爺さまたちは、難なくクリアーしていくのですね。爺さまたちは、技術的なことにも精通していたのでした。

 一方REDたちを抹殺する指令を受けている、若手エージェント側も、なかなかの手練れです。決して経験でREDたちに劣ってはいませんでした。時にリーダーのクーパーは、侮れません。サラを誘拐しようとする知略に加えて、ガンの腕前と接近戦での強さは、何度もREDたちをピンチにに陥れます。
 このクーパーは、憎き敵役かというと、意外と良心と正義感の持ち主だったりするのです。自分に下された命令がどうやらおかしいと気付いたとき、ラストのドンデン返しを演じることになります。

 クーパーの執拗な襲撃に、REDたちが逃げ込んだのが、なんと旧ソ連時代に敵対したロシアの情報機関の支部長宅。昔のなじみで呉越同舟してしまうところに、時代の流れを感じました。そればかりではありません。REDのメンバーのヴィクトリアはなんと支部長の恋人だったのです。いや~でもねぇ、演じているヘレン・メリルというばMI6の名うての女スパイだったわけじゃあないですか。それが旧ソ連のスパイを手なづけて、REDの助っ人に馳せ参じさせてしまうなんて、ちょっとカルチャーショックですよ。

 でもこの支部長、単に色仕掛けで応援しているだけでなく、ちゃんと計算が合って、一仕事終わったら、REDたちにバーターで仕事を要求するのです。さすがに抜け目はありません。この支部長の計算高さが徒となって、本作は続編を作らないといけない終わり方になってしまいました。

 末期の肝臓がんにかかったジョー役を演じるモーガン・フリーマンがやはり魅せてくれましたね。逃げを失った敵襲に自らしんがりと成り、犠牲になることを告げるときの台詞が決まっていました。渋いです。
 最近いい作品から見放されていたブルース・ウィルス。本作では、本来のアクション俳優としてポテンシャルを見せつけてくれました。加えて、なにも事情が分からない恋人サラとのやりとりでは、惚けた芝居で結構笑わせてくれます。ブルース年齢と共に、演じる幅がシリアス一辺倒でなくなってきていて、そのうちコメディにも本格出演してもいけるのではないかという軽妙な演技でした。

 後半の展開が、時間切れか、やや進行の飛び幅が大きくなり、雑になっていくのが残念でした。けれども自分たちを殺そうとする謎の暗殺者の正体に迫ろうとする、REDたちの年齢を感じさせない活躍ぶりは、意外性もあって楽しめることでしょう。

流山の小地蔵