劇場公開日 2011年2月11日

「マンガ原作映画の最高傑作」あしたのジョー javoonさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0マンガ原作映画の最高傑作

2011年2月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

あまりに強烈な映画だった。これまでに、これほどの完成度のマンガ原作映画があったであろうか?私の知る限り、『ピンポン』が最高傑作。あとに続くのは『海猿』?『三丁目の夕日』?そんなところか。最悪なものはいくらでも出てくる。『カムイ外伝』、『デビルマン』、そして『ヤマト』である。ところがである。この『あしたのジョー』は明らかに『ピンポン』を超えている。つまり現時点でマンガ原作映画の頂点に立った。

この事実に気がついている人が果たしてどれだけいるだろうか?よく考えてみればわかる。他にどの映画がこの映画より完成度が高いというのだろうか?つまりマンガ原作映画の現時点での頂点を既に鑑賞された皆さんは目撃したことになる。もちろん反論や異論も多々あろう。『ピンポン』が公開されたときも原作ファンの一部は大荒れに荒れた。ここのレビューにもいるヒステリックな原作ファンが総攻撃した。そしてそのあまりに先鋭的な映画表現にプロや評論家たちの賛否も別れた。あの井筒監督などはテレビ番組で、これは映画とは言えないと言い切ったのである。他の映画監督もかなり動揺し、認めないという人々が多くいた。ところがである。『ピンポン』は多くのネガティブファンや保守的なプロたちの叩きを跳ね返し、今世紀を代表する映画として国内外で広く認知されている。カンヌ映画祭でグランプリを獲ったチェン・カイコーは21世紀の映画だ、と絶賛し、リュック・ベッソンも大のお気に入りだという記事を読んだ。

もう『ピンポン』を超えるマンガ原作映画は出現しないだろうと思っていた。しかし、遂にここに出現したのである。『あしたのジョー』、それは映画としての完成度では『ピンポン』を超えてしまった。それも同じ監督、曽利文彦の手によって。

『あしたのジョー』もまた一部の原作ファンや、この映画の存在を恐れる業界人に大ブーイングを食らっている。でも何を言おうが、どうあってもこの映画の完成度は最後には認めざるを得なくなる。

『ピンポン』もそうだったが、『あしたのジョー』も先を行き過ぎている映画かも知れない。わかる人にはその凄さが敏感に伝わるのだが、鈍い人にはいつまでも伝わらない。井筒監督が全否定した映画が、映画史に残る名作となったように、『あしたのジョー』もまた、その有名過ぎる原作を持ったがゆえに当分は一部の人々に標的とされるであろう。

例えば過去に撮影された日本映画のボクシングシーンで『あしたのジョー』を上回るものがあったであろうか?『どついたるねん』『キッズリターン』『ボックス!』どれもこの映画の前にはまったく無策のドキュメンタリー映画のように見える。比較するとなると、ハリウッド映画を持ち出すしかなくなる。しかしハリウッド映画を持ち出したところで、この稀な試合シーンの表現力と比較する対象がない。つまりハリウッドの物まねではなく、ハリウッドが物まねしたくなる映画になっている。

歴史の渦中にいるときは、そのとき起こっていることが客観的に把握できないものである。この映画が正当な評価を受けるのは随分後になってからかも知れない。後々、やっぱり大スクリーンで見るべきであったと後悔する人々が多発することになるかも知れない。そのとき初めてこの貴重な体験を誇りに思うだろう。俺は映画館で『あしたのジョー』を観た!と。

javoon