白夜行のレビュー・感想・評価
全64件中、61~64件目を表示
ラスト30分は、驚愕というほかありません。こんな衝撃は、2度と味わえないことでしょう。必見ですよ!
深川栄洋監督は、小地蔵が最もリスペクトする若手を代表する監督です。その持ち味は、きめ細かなカット割りを巧みにつないで、映像でストーリーを展開していくところにあります。時に観客を欺くトリッキーな演出もあり、「深川マジック」と呼ばれることもあるほどです。
本作は、主要出演者に今までにないキャラを演じさせていることもあって、凄く期待していた作品でした。
前置きはさておき、見終わった感想として、ヘビー級に重く苦しいラストと前半の説明抜きに淡々と描かれていく「事実関係の羅列」に、筋に付いていくのに苦しみました。何しろ主演した堀北真希ですら、「出来上がった映画を見ましたが、それでも理解するのは難しいです。」といっているくらい前半の事件のあらましを掴むのは困難なのです。
ラスト30分になって、ようやくネタバレされるとき、やっとそうだったのか納得できました。ここまでたどり着くのに、ちょっとしんどかったなぁ~というのが正直な気持ちです。
原作が、読者を突き放して、次々事件を展開させていく筆致なので仕方ないのかもしれません。また真犯人が、絶対に予想不可能な信じがたい人物であるし、途中で捜査も暗礁に乗り上げて、推理サスペンスとしては観客が、捜査する人間に感情移入して犯人推理に参加し得ないような、難解な謎になっていることも、難しさを感じる要因だと思います。
そういう原作に輪をかけて、策士策にはまるというか、「深川マジック」が、より難しくしている思います。
極端にネタバレを嫌い、事件が起こって人が死んでいても、ちらりと見せただけで、さくっと場面を次のシークエンスに進めてしまうのです。アレレ、あのシーンはどういう意味なのか、ゆっくり推理している暇を与えてくれません。まさに問答無用で、ラストのネタバレまで突き進みます。だから1回見ただけでは、よく分からないのです。せめてチラシに載っている人物相関図で、登場人物と人間関係を把握してから見たほうが、疑問点が少なくできるので、予習をお勧めします。
よくテレビ朝日のサスペンス劇場は見ます。だいたいパターンが決まっていて、中盤まで犯人らしい人に疑いがかかるように描いて、ラストでひっくり返して、風光明媚な場所で、「真犯人はあなただ」と名指しするわけですね。サスペンス劇場の謎は、適当にヒントが散りばめていて、だいたい推理できます。だからといって、犯人がバレバレなのは興ざめですが、全く誰だか分からないというのも、ちょっと感情移入しにくくなりますね。 だから少し途中で、事件のヒントが欲しかったです。あるいは容疑者扱いされる妻の桐原弥生子や指名手配される妻の不倫相手の松浦勇をもっと犯人ぽく描いてもよかったかも知れません。
ネタバレが絡むので抽象的になってすいませんが、ストーリーは懲りすぎた嫌いがあります。原作者のコメントでは、本作の理屈は読者銘々で独自に解釈しているうちは問題がないが、映像化されて特定の人間の「理屈」が開陳されるとなれば話が違いますとコメントしています。深川監督は、かなりストイックに原作に忠実であろうとし、自分なりの余計な「理屈」をこそぎ落とした結果、難解になってしまったのではないでしょうか。
それでも各出演者の役作りは、素晴らしいです。なかでも、堀北真希は、自らの過去を殺して成り上がっていく難しい役どころとなる悪女・雪穂を見事に演じきっています。
最後に自分のために、死を選んでしまうとある青年に、「知らない」といって笑みすら浮かべるところでは、ぞくっとしました。「殺したのは、心」というコピーがぴったりの演技でした。
それと刑事役の船越英一郎もよかったです。サスペンスの帝王も普段テレビで見せる熱血刑事ぶりを封印し、事件を解決できなかった無念さをたっぷり背負った、哀愁に包まれた役柄を公演しています。真犯人に自分の息子になれとまで同情する人情派という設定は、船越にしては珍しいのではないでしょうか。
とにかくラスト30分に突き付けられる雪穂の壮絶なる19年には、驚愕というほかありません。その背負っている過去を知るほどに、彼女に何の罪があるのか、弁護したくなるほどでした。こんな衝撃は、2度と味わえないことでしょう。必見ですよ!
白夜行
東京国際映画祭にて鑑賞。
驚いた。
二時間半近くの時間を感じなかった。
しかし、おもしろかったからでも、引き込まれたからでもない。
まったく心が動かなかったからだ。
『感想がない』のである。
ここで難しいのは、面白くないという感想もないということだった。
ディテールにこだわった映像や、脇役に至るまでの過剰になりきらない演技、昭和の、あの頃の時代考証と、いずれもよかったと思う。
しかし、それだけだった。
『心が動かない』というのは、作品として「面白くない」ことよりも、もっと致命的で、失敗作といえるのではないか。
しかし、先に書いたようにパーツはよかった。では、なぜそうなったのか。
監督は当日の舞台挨拶で、
「作品にとても魅了された。東野圭吾さんという作家、ではなく、深川という作家が、白夜行という原作を受けて、僕の切り口でお見せたかった」
と語った。
これが原因ではないか。
映画のストーリー展開ではないのだ。
とにかくストーリーにメリハリがない。淡々と、静かに進んでいく。
いつおもしろくなるのかと思いながら見ていたら、そのまま映画が終わってしまった、という印象だった。
それは、時系列に忠実に描きすぎてしまっていることが原因ではないかと思う。
もう一度いいたいが、これは映画なのだ。
原作は、文字を追い、映像や音といった五感を自分の想像力で補いながら物語を読み進めていく小説である。その間、読者は、小説と重厚且つ濃密な関係を築いている。そこに時間の制限はなく、理解ができなかったならば、何度も戻って読み返すことができるのだ。
しかし映画は、視覚と聴覚をメインとしているが、時間的に制約がある。つまり、小説とは対極に当たる表現方法なのだから、小説と同じアプローチでいいはずがない。
素人ながら例を挙げるとするならば、出だしから雪穂の夫と元刑事の笹垣との会話から始まってもいいかもしれない。
もしくは、笹垣が亮司の母が営む場末のバーで話しているシーンでもいいかもしれない。
刑事である笹垣が、公に容疑者にもなっていない雪穂を追い続けているという現在から、その理由を過去の事件と共に回想し、その事件には常に雪穂の影があった事を明らかにしていく。やがて事件の真相に気づくという展開などにはできなかったのだろうか。
どこか作り物のような、得たいの知れない美しさを持つ雪穂という女性は掘北さんに、決して表に出ることはなく、影ながら雪穂を支えてきた亮司という男は高良さんに、お二人ともとても合っていた。
二人を確実に追い詰めていく笹垣刑事役の船越さんもすばらしかった。
亮司を愛したあの女性も、二人の子供時代を演じた俳優二人もすばらしかった。
私は、東野圭吾の白夜行という小説を、深川監督がどう「映画」にするのかが見たかった。
残念だといわざるをえない。
なんだか、のっぺり
散漫な印象でした。
話の流れを組み立てるので精一杯というか…
エピソードの尺のバランスがいまいちで、
時系列どおりのはずなのにわかりにくかった。
原作も読んでないし、ドラマも見ていません。
ただ、あらすじはちょっと知っていて。
そんな感じで観たのですが、
クライマックスにむけての盛り上がりに欠けるというか。
それに、2時間越えたあたりでの回想シーンは勘弁してほしかった。
全体的な雰囲気とか、昭和後半の時代感とかは
よく出ていたと思います。
重苦しいテーマながらドライに進んでいくので
とっつきやすいのでは。
全64件中、61~64件目を表示