劇場公開日 2010年11月6日

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「アホ映画だけど金はかかっていて、演出は本格的。理屈抜きで笑えます。」さらば愛しの大統領 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アホ映画だけど金はかかっていて、演出は本格的。理屈抜きで笑えます。

2010年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 公約通りのアホ映画。だからベタという批判は受け付けません。それを前提に評価するなら、一見アホな笑いの中に、ナベアツの考え抜かれた仕掛けが満載であり、こんなのアリかもと妙に納得させられるところがあるのです。随所に仕掛けが効いていて、爆笑に次ぐ爆笑でした。映画と構えて見なければとっても楽しい作品です。松本人志が閃きタイプでシュールな笑いを追及しているのに比べて、こちらはコテコテの浪花流で、単純だけど、仕草や台詞の面白さを追求している作品です。だから凄くわかりやすくて、頭を空っぽにして笑えるむことでしょう。

 ナベアツと共同監督している柴田大輔は、今は一番のCMクリエーターなんです。本作を撮影している間にも、フジテレビのマツコデラックスを起用した、キャンペーンCMの企画書を仕上げて、見事にプレゼンを通してしまうという実力の持ち主。だから、ストーリー展開はアホでも、場面場面の登場人物の感情表現は、きっちり決めていました。
 ただCM監督にありがちな欠点として、短いコント映像を積み上げる手法で長編化しているので、全体の起承転結としては面白味に欠けるという点は、今後の課題だろうと思います。本作でもシークエンスごとには、面白いのですが、全体のオチとしては、もう一ひねりするとか、思わぬところで泣かせる作品にしてしまうとか、トータルで主張するテーマを強調して欲しかったと思います。

 ストーリーは、誰もが予想しなかったナベアツが大阪府知事選に当選することからはじまります。ナベアツ知事が宣言したのは、なんと大阪府の独立宣言。「大阪合衆国」の初代大統領となったナベアツは、次々と画期的政策を発表していきます。
 アホな展開の割には、ナベアツの立候補といい、また大阪の独立も現実にあり得そうな話なので、馬鹿にはできません。
 政策面でも、笑いのテーマパーク「オモローランド」計画も、ナベアツが知事に当選したら、町おこしの起爆剤として本当に実現するかも知れません。テーマパークで活躍するゆるキャラたちなんて、どこかの街や企業で採用したっておかしくないレベルです。
 特に、1号・2号共に、ナベアツ大統領の暗殺に身体を張り殉職する、「串かっちゃん」の悲劇にはペーソスを感じました。串揚げそのものの彼を見ているときっと気分が『アゲ、アゲ』になるでしょう(^_^;)
 面白いのは、エネルギー政策。なんと人が笑うとき起こるエネルギーを集めて発電する「笑力発電」のシーンは、特に可笑しかったです。
 また防衛政策では、特に軍備はせず、恐怖の難波のおばちゃんパワーを使って、外敵を殲滅してしまうというのです。その難波のおばちゃんの戦闘シーンは、結構本格的。CGまで入れて、こんな馬鹿げたシーンに製作費をドド~ンと投入するなんて、狂気の沙汰と思いつつも、難波のおばちゃんパワーを見せつけてくれましたねェ~。まぁ、『ランボー』や『プラトーン』をパクリのシーンは、ご愛敬でしたが。

 そんなナベアツ大統領を、快く思わない影の存在があり、執拗にヒットマンを送り込んで暗殺を謀るのですが、銃弾のタマのかわし方一つとっても、ナベアツらしさが光るエスケイプぶりで、これも可笑しかったです。
 そして暗殺犯と黒幕を追い掛けるのが、宮川大輔とケンドーコバヤシのお馬鹿刑事コンビ。ナベアツに負けじと、あちこちでアホなコントを披露しています。

 二人の必死の捜査によって、大統領のすぐそばの意外な人物が、犯人一味の一人であり、密かに暗殺するタイミングを狙っていたということろが唯一映画らしいストーリーかなと感じられました。

 アホ映画なのに、キャストやCGに結構お金がかかっている大作です。お笑いファンには、映画ならではの手の込んだ背景で笑わせてくれる必見の作品でしょう。
 なお、試写会では、柴田監督とナベアツが舞台挨拶をしました。生で見ると、ナベアツは伊達ではなくて、会場の空気をがらりと変えてしまう強烈なキャラクターを感じさせてくれました。さすが人気者は違いますね。

流山の小地蔵