劇場公開日 2011年2月19日

  • 予告編を見る

「イーストウッド史上初!」ヒア アフター カオナシさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0イーストウッド史上初!

2011年1月25日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

幸せ

近年のイーストウッド作品は、上映時間の長短にかかわらず、ある種の長さを感じさせるが、その長さの中でしか味わえない充実した感動を与えてくれる。本作も例外ではない。

津波で臨死体験にあった女性キャスター(セシル・ドゥ・フランス)、双子の兄を事故で亡くした少年、霊能者であることを隠して生きる男(マット・デイモン)。パリ、ロンドン、サンフランシスコで暮らす各人物が絡むまでに多くの時間が費やされ、一瞬アメリカ公開時の低調な評価が頭の隅をかすめるが、地下鉄テロが勃発し、ロンドンで一同が交錯するあたりから俄然面白くなり、最後にはイーストウッド監督ならではの濃密な余韻に包まれる。

見ている間は、料理教室の場面など切り詰めた方がよいのでは、といった瑣末な不満が湧いてくる。しかし、見終わってしまえばそんなことはどうでもよくなる。この満足感は、映画が後半になるにつれてしみじみとしたユーモアを発揮し、イーストウッド史上最も幸福な結末(見てのお楽しみ!)を迎えるラストがあって、はじめて得られるものだ(いま思えば、料理教室のラブコメ風な味付けは、かくなる結末の前兆なのかも。だとしたら、なんて大胆な演出だろう)。

セリフが多く、津波を除けば派手な場面も少ないため、どんな映画なのか中盤まで見えてこないのは難点だが、マット・デイモンの霊能者は狂言回し的存在であり(じつは、ソウルメイト=生涯の伴侶を探す男性といった役どころ)、「来世(ヒアアフター)」を見てしまった女性と死者への想いを引きずる少年の、魂の救済の物語として見ていけば、たしかな手応えを感じることができるだろう。

主役の3人は役にふさわしい好演。出番は少ないが、ブライス・ダラス・ハワードが感情の起伏のある役柄ですばらしい演技を披露している。

カオナシ