劇場公開日 2010年7月3日

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「The Coveからドキュメンタリー作品の存在意義を考える」ザ・コーヴ h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0The Coveからドキュメンタリー作品の存在意義を考える

2020年7月21日
iPhoneアプリから投稿

2010年に公開され大きな論争を巻き起こした作品。

なぜイルカは助ける存在で、牛豚はそうではないのか。
イルカは知能が高く、牛豚は知能が低いから?(それって優生思想と一緒じゃない?)
牛豚は家畜で人間に食べられる存在だから?
決して納得できるロジックではない。この作品を観ても、答えは結局見つからない。

確かに、太子町のイルカ漁は直視できないほど残酷だ。しかし、屠畜の現場もテレビでは決して放送できない残酷な映像だ。

イルカ漁を行う側は強力な「悪」で、反対する側はか弱い「善」で、まるでゴリアテに対するダビデのように描かれている。

イルカ漁を行う人間は野蛮な民で、高度な文明を持つ我々(制作側)が啓蒙する必要があると言わんばかりだ。

個人的にはイルカ漁に賛成でも反対でもない。ただし、イルカ漁だけを一方的に道徳的な悪とみなすのは、フェアではないということだ(彼らの一部の言動は、帝国主義時代のアプローチのように暴力的だ)。

イルカ漁に水銀摂取を結びつける論理には、相当の悪意を感じる(マグロ肉の摂取時とどう違うのか。具体的なエビデンスは?)。

森達也監督が言うように、ドキュメンタリー作品において主観を完全に排除して中立な位置で視点を置くことなど不可能に近い。

atsushi