劇場公開日 2010年6月26日

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「マニキュアと彼氏は同レベル」さんかく cmaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5マニキュアと彼氏は同レベル

2011年10月2日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

怖い

興奮

笑っちゃうほど、痛々しい。あきれながらも、身につまされる。…そしてどこか、憎めない。結局、なんだかんだと応援したくなる。「机のなかみ」「純喫茶磯部」の吉田監督の人間描写には、さらに磨きがかかったようだ。より繊細に、より鋭く、そしてあたたかく。
見えっ張りな彼とその彼女、そして妹。ありきたりな三角関係のラブコメディ…には程遠い。とにかく、出る人出る人、ダメ人間ばかりでぎょっとする。しかも、彼らのやることなすこと、多少なりとも身に覚えのあることばかり。様々な予感が頭の中でふくらみ、目が離せなくなる。
満面の笑顔で友人をマルチに誘う女、卑屈なほど目上におもねる後輩…と、クセ者揃いの脇の面々もさることながら、とにかく、主役3人の対比が心憎い。見るからにダメ男ながら、あまりの不幸続きに、やや右肩上がりに共感(同情?)を誘う百瀬。世話好きなしっかり者と思いきや、いきなり急降下していく佳代。他の作品での二人(たとえば「クローズ」の不良、たとえば「ハッピーフライト」の地上アテンダント)を知っていても、「もしかして、地で演ってる?」と疑ってしまうほどの自然体で、それぞれにダメっぷりを発揮する。(百瀬=高岡に関しては、「最近のあれこれ」が若干かぶるが…。)
対する桃は、こわいもの知らずのぶれない十代。彼女にとっては、姉の「お気に入りのマニキュア」も「同棲中の彼氏」も大差ない。…ちょっと借りただけだよ。いいじゃん、それくらい。お姉ちゃんのものに興味を持つのって、当たり前じゃない?、私、妹だし、まだコドモだし。そんな彼女の声が聞こえてきそうだ。
クセ者同士の絡み合いもさることながら、畑の中を走るヤン車、(多分、「純」がつく)喫茶店でのマルチ勧誘、郊外の大型店舗での商売無関係のぬるいやり取り…と、出来事と場面の取り合わせも絶妙だ。「人ごとじゃない、どこか見た風景」という感覚をくすぐる。もしかして、スクリーンの端っこに自分がいるかも、とそわそわしてしまう。
観終えたとき、「ま、自分には関係ない世界だね」と言い切れる人は、どのくらいいるだろう? そんな人こそ、「さんかく」ワールドの完璧な住人だ。平穏に生きていきたいなら、そんな彼/彼女には御用心!

cma