劇場公開日 2010年6月19日

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「本の本当の正体はラストでなければ分からない」ザ・ウォーカー マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5本の本当の正体はラストでなければ分からない

2010年6月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

幸せ

色を削ぎ落とした映像といい、音楽の響きといい、「ブレードランナー」を意識した感がある。ただ、技術的な進歩もあり、カットごとに細かい色彩コントロールが施されており、視覚的に訴える力は強力だ。さすがにプリントの質も高い。
さて問題の本だが、観る前からアレじゃなきゃいいんだがって思っていたのに、しっかり的中! おおかたの日本人にとって、アレの持つ意義はかなり小さく、ましてや命を懸けて奪い合うことなんてことは理解を超えたものだろう。日本で、この作品が受け入れられるかどうかは、この一点に絞られそうだ。
その難しさが邦題に現れている。この作品が持つ本来の訴えを表現するならば、原題の“イーライの本”が意味も深くぴったりだ。ところがこの本の有り難みに疎い日本人に訴求するとなると、この映画が持つもう一つの顔、アウトローの西部劇的なアクションを強調するしかなく、その結果が「ザ・ウォーカー」という深みに欠けた邦題だ。これは致し方のないことだ。
ラスト・・・、ミラ・クニス演じるソラーラを観ても、日本と欧米の間では違った見方、印象を受けるんだろうな、きっと。私なんぞは、この双子の監督、コスプレ・ファンか?と思うのが精一杯だった。

ただ、★★☆だからといって駄作ではない。本が何であるかは分かっても、本当の正体はラストでなければ分からないし、原題の持つ意味も理解できない。

なお、私はこの本を読んだことがあります。40年ほど前に黛敏郎が音楽を手掛けた米伊合作映画があって、この本に興味を持ったのです。映画化されたのは、この本の冒頭、数十ページ分に過ぎませんでした。

p.s. 久々にジェニファー・ビールスが見られて嬉しい。

マスター@だんだん