「シリーズへの愛着を感じさせる“リミックス”映画」踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ! 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0シリーズへの愛着を感じさせる“リミックス”映画

2010年7月11日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

楽しい

『踊る大捜査線』シリーズは映画版の『1』『2』と『容疑者 室井慎次』しか観ていない……おまけに内容もよく覚えていない。
『1』は好きだが、後の2作はまるで楽しめなかった覚えがある。
本広監督の前2作も個人的にアレだったので、期待せずにいたけれど……

面白いじゃないですか!
話のスケールも大きいしテンポも早い。2時間超の上映時間も気にならず、素直に面白い!と思えた。

『踊る〜』は1作目でも過去の映画を混ぜ込んでたようだが、今回は『野良犬』『生きる』『レッドドラゴン』『ダイハード』といった過去作をごった煮にして『踊る〜』に落とし込み、まるで“リミックス映画”とでも呼べそうな様相だ。
何でもかんでも詰め込んだ為に、その“割り”を食って物語のテーマや数多のキャラの描写がかなり中途半端になってしまっているのは確か。
だが個人的には、コメディ・サスペンス・スリラー・アクション・シリアスドラマとくるくる変化するその盛り沢山な内容がかなり楽しめた。

青島刑事の仲間を思う気持ち、そして死ぬ気で証明してみせた職務への“誇り”にも目頭が熱くなる(だからこそ、“影”の真相を話すのは最後の最後にしてほしかったな)。
他のメンバーは出番は減ったが、作り手の愛情はしっかり注がれているようだ。今は亡き和久さんだって、“いる”と感じる。
顔見せ程度のキャラも多いが、きっと作り手自身が「アイツ、どうしてんのかなぁ」と気になって登場させたんだろう。

技法的な所を言えば、人がひしめき合う新旧湾岸署内をワンカットで見せていくシーンが面白い。メインキャラが他愛ない会話で笑わせるその背景で重要な出来事がさりげなく進行していたり、更に小ネタを仕込んだり、目まぐるしい事この上無い。これだけの人口密度をよくさばけたもんだと唸ってしまった。

ハイ、次、不満点。
メインキャラは多少大袈裟な振る舞いをしても気にならないが、犯人や警察庁のトップ連中といった、この映画のいわゆる“悪役”達がステレオタイプの悪党に過ぎないのが非常に残念。
「この部屋の中に正義は無いんだよ」なんて台詞、口に出す人間なんていないだろう。時代劇の「お主も悪よのう」と同レベルだ。
この辺りは前作から全然進歩してないすね。

けどやっぱり、多少の“穴”があるにしても、作品への愛着を感じる映画を嫌いにはなれない。
『次も観たいな』と思えました。

<2010/7/3鑑賞>

浮遊きびなご