劇場公開日 2010年3月12日

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「ストーリーは単純だけど、ヒュー・グラントとサラ・ジェシカ・パーカーが絶妙で、気軽に、退屈することなく最後まで笑わせてくれます。」噂のモーガン夫妻 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ストーリーは単純だけど、ヒュー・グラントとサラ・ジェシカ・パーカーが絶妙で、気軽に、退屈することなく最後まで笑わせてくれます。

2010年3月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 基本は、典型的なラブコメ作品ですが、シナリオが練り込められており、ドタバタでないところに好印象を持ちました。テンポも良く、ヒュー・グラントとサラ・ジェシカ・パーカーが絶妙で、気軽に、退屈することなく最後まで笑わせてくれます。

 そればかりではありません。証人保護プログラムで匿ってくれることになるサムとメアリーの保安官夫妻から、夫婦の秘訣をふたりは気がつかされることになるのです。夫妻のアドバイスがなかなか含蓄があるのです。最近夫婦喧嘩をして、関係修復の糸口を模索している方には、凄く参考になると思いますよ。
 なかでも、再び喧嘩をし始めた、あたりに普段は寡黙なサムが、一喝する言葉が、素敵でした。『結婚とは理屈じゃないんだ、続けることなんだ』という強い口調のサムの言葉を聞けば、お互いの立場を認めさせる事ばかり考えている喧嘩中のご夫妻でも、その自己主張を見直して見る気持ちになってくることでしょう。

 その直前の牛の乳搾りのシーンも良かったです。
 別居中に自分も浮気してしまったことを切り出せないメリルは、サムにどう伝えればいいのか相談します。サムはそんなメリルの言葉を遮り、まず目の前の牛の乳を搾れと命令します。上手くできないのというというメリルに、サムは優しくだと一言。
 恐る恐るだったメリルの牛の乳を搾る手が優しく扱うようになったとき、スムーズに乳が出るようになります。ふとそこでメリルは気付くのですね。ああそうか!けんか腰でなく、ポールにも優しく伝えればいいのねと。
 たぶん気取らないサムが、それとなくメアリにアドバイスしようと乳搾りを誘ったのだろうと思います。だけど、メリルの言葉にも表情を変えずに、まぁそういうこともあるかもだと素っ気なく応えるところが、この老保安官の人情味を印象深くしたのではないかと思います。

その後のメリルがポールに自分の浮気を告白したときの、リアクションも絶妙。先に浮気をしてしまったポールとしては、怒るに怒れず上辺だけ作ろうとするも、仕草の端々に嫉妬の炎をメラメラと燃やしているのです。
 演じているヒュー・グラントがノリノリなんで、見ている方もポールの気持ちに、そうだよねぇ~と、ついつい同情してしまいました。

 あと、証人保護プログラムで強制同居させられた当初は喧嘩が絶えなくて、サム夫妻もうんざりの状況でしたけれど、そんなふたりの仲が一変する星空のシーンが、なかなかロマンチックでした。
 サラ・ジェシカ・パーカーをキャストして、生粋のニューヨーカーであることを意識させるメリメにとって、こんな田舎暮らしも、こんな落ちてくるぐらいの星空も、生まれて初めてのことだったのでしょう。
 そんな大自然に囲まれると、つまらないことで喧嘩しあっていることが馬鹿馬鹿しくなるものです。
 そんなふたりを見ていて、自分の害される思いを捨てて、相手を許す事って、素敵だなと思えました。都会暮らしの雑事に追われていると、ついつい相手の立場や気持ちまで気持ちが回せなくなって、自分の感情ばかりに流されてしまうものなのですね。本心では、何とか和解したいと願っていても。

 本作の特徴に、ラブコメには珍しいサスペンスの要素が加味されています。ふたりが目撃するプロの殺し屋よる殺人現場。その後目撃者であるふたりを抹殺すべく、しつこく追ってきます。追ってくる過程は、なかなか良く作り込んでいるのですが、最後に捕まるところが何ともお粗末でした。
 せっかくのサスペンスの要素なのですから、最後までもっとハラハラするシーンがきっかけとなって、ふたりが再び結ばれる展開になって欲しかったです。

 最後に気になることがあります。
 ラストに養子の赤ちゃんを抱いたメリルのお腹が大きくなっていたのですが、あれは赤ちゃんができたのでしょうか。
 また、エンドロールが終わって、暗転したままで、留守番電話の音声が再生されます。その声は、ポールのメリルに宛てたメッセージでした。オープニングと同じ状況がリフレインされています。
 またまた浮気して、別居したのかなぁ。こんなにすったもんださせといて・・・?

流山の小地蔵