劇場公開日 2010年1月9日

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「渡辺大の殺陣は良かったけれど、過激なスプラッター作品なんで気力が要ります。疲れたぁ~!」彼岸島 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0渡辺大の殺陣は良かったけれど、過激なスプラッター作品なんで気力が要ります。疲れたぁ~!

2010年1月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 試写会応募ではお世話になっているヤングマガジンのヒット漫画でありますが、小地蔵はもっぱらカイジと試写会コーナーしか見ないので、原作は眼中にありませんでした。
要するに吸血鬼ゾンビの巣窟となった地図にも記載されていない離島に、高校生のグループが乗り込んで、行方不明となった主人公の兄を捜しつつ、鬼退治をする話なんです。
 日韓合作で、韓国人の監督が手掛けたところから、のっけからスプラッターなシーンが炸裂。えっ~こんなえぐい作品だったのってのけ反りましたぁ!

 兄・篤が冒頭でいきなり、ゾンビ狩りをするシーンは、凄まじいの一言。何せ頭をつぶさないと再生してしまうので、篤はフィニッシュで、どでかい丸太みたいな棒で、頭部をブシュっとつぶすのです。それが何体も連続するから、血しぶきがドバドバで、血のりべたべたのまともに正視できないくらいの映像です。

 それでも引き込まれるのは、篤を演じる渡辺大の真剣を振りかざす殺陣のかっこよさと、迸る殺気です。その目力の強さは、ハリウッド俳優として国際的に活躍する父親譲りでしょうか。この篤と後述するゾンビのボスキャラが頑張っているから、他がダメダメでも何とか見応えの作品となりました。

 そのゾンビのボスキャラ雅を演じたのは、山本耕史。小栗旬かと思ったくらいキャラを作り込んでいます。ゾンビにしてはクレバーで、白塗りの怪しげな出で立ちから、底知れぬ怖さと知謀を感じさせてくれました。

 あと「師匠」というレジスタンスの面々を導く頭領もなかなかの存在感でしたね。誰が演じているでしょ(^^ゞ何せ、面で素顔を隠し、声を変声しているから誰だかよく分かりませんでした。

 反面、ダメダメの代表格は、弟役の明を演じた石黒英雄。こっちはまるで目力を感じさせず、ボスキャラと対決シーンでも、殺気負けしています。冒頭の悪ガキ高校生のまんまで、成長を感じさせません。これは明らかにミスキャスト。市原隼人の方がもっと骨っぽい明役を演じたのではないだろうかと思います。
 その分、兄弟の絆を見せるところでは、グッとくる芝居をします。だから決して石黒の演技がダメというのでなくて、はまっていないだけなんですね。

 ストーリー面でも、突っ込みどころ満載。だいたい島に封印されているはずのゾンビの一部が、どうゆう訳か都会に潜伏しているのです。そんな設定は有りとしても、独りでもそんなゾンビが潜伏していたら、食糧としての人間も増えていくのだから、目立たない訳がないだろうと思うのです。

 そして明の悪ガキ仲間たちは、まるで遠足に行くみたいに、陽気にワイワイと島を目指してしまうのです。韓国人の監督は、こういうところに無神経なのでしょうか。案の定、島に着いたとたんゾンビに狩られるはめになってしまいます。
 そして逃げ惑う中で、内気で臆病な性格のボンが、普段のいじめに反発して、単独行動に出てしまうのも、その先の展開がバレバレで興ざめしました。
 すこしいじめ問題を絡ませて、御涙頂戴シーンを狙ったのかも知れませんが、あざとく感じます。
 その辺は、韓国映画出身だけに、演出過剰気味なところが自然に出てしまうのかも知れません。ただ日本人のゆかしさを求める心情に、チョットマッチしないくらい、これでもかと感情をたたみ掛けてくるくどさを本作には感じましたね。

 ゾンビのボス雅の愛人となる謎の美女・冷。セックスをしても感染しないのはなぜだろうと思いつつ、この美女が明たちの味方になったり、雅の計略どうりはめようとしたり、立ち位置が曖昧なところが原作の魅力の一つではないかと思います。
 だけど本作では、冷の気持ちが上手く整理できず、女心と秋の空というか鳩山首相みたいにくるくるかわってつかみ所がにゃい!のが辛いですねぇ。

 そんなわけで、アクションはすこぶるいいものの、ストーリー展開には多いに不満が募る作品でした。兄弟の絆を語るところはいいのですが、一口にいってゾンビ映画なので、この手が苦手な人は、無理に見ることもないでしょう。

 釣りバカを見て、笑っている方が、精神的にいいと思いますよ。

流山の小地蔵