劇場公開日 2009年8月1日

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「あっさりポイっと捨てちゃうようなストーリーではないので、ご安心ください。」そんな彼なら捨てちゃえば? 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あっさりポイっと捨てちゃうようなストーリーではないので、ご安心ください。

2009年7月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 本作の原題は、「彼はあなたに興味がない」(He's just not that into you)という意味。確かにこちらのタイトルに従って、くどいように女の子の思い違いを見せつけます。

 まず少女時代から思い違いがすり込まれてしまうのだということを、プロローグの映像から本作は力説します。自分をいじめてくる男の子の存在にベソをかいていたら、「あの子はあなたに気があるからよ」って母親から慰められる。こうしてその一言は、ずっと女の子の心に刷り込まれてしまい。男心を読み間違える原因となってしまうのだというテーゼを示します。なかなか笑っちゃうペーソスに満ちた始まりです。

 その冒頭のテーゼを証明するかのように、各論ともいえるテーゼが示されていきます。 トップバッター「一週間たっても電話がかかってこないのは、彼はあなた興味がないからだ」では、悲しいまでに、電話の前で彼からの電話を待ちづける女性の願望を、徹底的に突き崩していきます。

 そして畳みかけるように、「結婚しないのは、彼はあなた興味がないからだ」のテーゼに移り、結婚願望にとりつかれている女性の微かな希望を打ち砕きます。
 まるで恋愛で勘違いしている女の子たちに、お節介に「彼はあなたに興味がない」としつこくお説教するような作品なのです。ご親切にも、アレックスというバーの経営者を恋愛アドバイサーみたいな立ち位置で登場させて、彼氏の消息を求めてやってくる主人公のOLトリオのひとりであるシジに「興味がないからだ」とストーリー中でも、説教させます。
 そんな親切な恋愛アドバイサー役のアレックスにまで、ジジは「もしかしてワタシに気があるのかも?」と勘違させてしまうストーリーも用意しているほどの徹底ぶりなんです。

 だから邦題につけた「そんな彼なら捨てちゃえば?」というタイトルは、原題からのファイナルアンサーというべきでしょう。

 けれども、そんな邦題に屈するジジではなかったのです。不屈のシジは、予想外の展開を見せてくれます。本作のテーゼを跳ね返し、たとえ電話がかかってこなくて傷ついても、男のサインを読み間違えて大恥をかいても、次こそ素敵な恋愛をするのだと挫けないところが、恋する女の子の勇気を応援してくれることでしょう。

 男の側からすれば、こんなに恋にアクティブな女性が現実にいるものだろうか疑問に思うところもあります。でも本作に94%の女性が共感したということは、きっと女心のなかに。本作と同じような不安と恋の決着を焦っている気持ちがあって、自分のじれったい心を代弁してくれるところがはまる点だろうと思いますよ。

 但し、アレックス同様に言っておきますが、あまり積極的に電話がかかってきたり、浮気チェックされたりすると、男という生物は、束縛されたくない自由の大地へトンズラしたくなるものですよ、そうでしょご同輩(^^ゞ

 そのほかストーリーは、同棲7年目を迎えてプロポーズを待ち続けるベスと、成り行きで結婚したものの、夫の浮気を見つけてしまうジャニーンの同じ会社のOLトリオの恋愛模様をパラレルで描いて行きます。それぞれに自分の勝手な思い込みによって、恋に翻弄される主人公たち。
 果たして、あなたの求めている恋の法則は、本作で見つかるでしょうか。

 映画的には、2組のエピソードをパラレルに描くつなぎの部分が早くて、全体のストーリー進行が見えづらいところがあります。現在公開中の邦画作品『60歳のラブレター』を見た人なら、こちらの3組の恋愛模様の描き方がすごく分かりやすかったはず。本作と比べてみると深川栄洋監督の演出手腕が優秀なことが感じられることでしょう。

 あと恋の傍観者であるアレックスの心の変化が突然で、そんなに都合よく変わるのかなと思いました。
 それでもラストのシジに起きる奇跡に、きっと感動されると思いますよ。
 つまつきあっている彼氏がいる人には、彼の気持ちを確かめてみるのにちょうどいい作品でしょう。

 あっさりポイっと捨てちゃうようなストーリーではないので、ご安心ください。

流山の小地蔵