劇場公開日 2020年1月17日

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「佐久間君も忘れないで。」サマーウォーズ とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0佐久間君も忘れないで。

2019年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

興奮

萌える

健二と陣内一族で戦ったかのような粗筋。
佐久間がいなかったらどうなっていたのやら。

色調が好き。
色使いが好き。
デザインが好き。
構図が好き。

OZ。
 昔々のウゴウゴルーガのように、雑多な色が詰め込まれた騒がしい世界。
 なのに、ホワイト系がうまく使われていて、開放感にほっとする。
 いつまでも、このおもちゃの世界に浸っていたくなる。

自然の緑と空+入道雲が嬉しい。
 現実世界で、いつの間にか心が縮こまっていたんだということに気づかされる。
 そして圧巻が、縁側を長回しで見せる場面。
 内にこもったそれぞれの想いと、天まで届けとばかりに飛翔する魂。明と陰り。記憶に残る名場面。

 敵キャラが、永井豪氏の『魔王ダンテ』みたいになってからの映像にも目を見張る。真っ黒一色にしていない。どんだけ労力費やしているんだ?セル画とデジタルの違いを見せつけてくれる。

そういう”画”で見せる場面がうまい。

反面、違和感を感じてしまうのが、人間の動き。
 骨がない、筋肉を感じられない、イカか水母のような軟体動物がうようよ動いているよう。
 手の動きとか腰の動きとか、一つ一つ、本当にこうなるかと自分の動きで確かめたくなり、集中できない。

そして、惜しむらくは、繊細な富司さんや神木君の演技に、映像がついてこれない。
 ディズニーや、昔の東映のように、人物の動きから絵コンテ起こせとは言わないけれど、せっかくの芸達者な役者を使っているのにもったいない。栄と健二だけ実写で見たかった。

物語は、IT音痴の私には、仮想現実でありながら現実でもなくはないのではないかと思ってしまう。
 尤も、だからこそ、現実では、幾重にもセキュリティがかけられていて、一つのウィルスで浸食できないようになっているんだろう。多分…。

 そんな、ある意味、起こりえるかもしれない設定を、深刻に書くのではなく、ひたすらアニメチックに、ゲームチック、中二病万歳的に描く。

花札が重要なアイテムになってくるが、
富司さんが声優をやっておられるからか、
花札が出てくるから、声優に富司さんをと頼み込んだのか。
まだ未見だけれど『緋牡丹博徒 花札勝負』がチラついて、吹き出してしまった。

筋も、ツッコミどころ一杯。
 健二のアバターが乗っ取られている=アカウントが乗っ取られているんじゃないの?
 戦いに必要なメンバーがご都合主義なのは片目つぶるとして。
 栄さんが電話をかけまくった先の人々の動きが見えなくて、それでどうなるが見えなくて、だから何なんだよと思ってしまう。
 栄さんの生き方、本当に親族に継承されているの?外から志を持っている者を取り込むことによって、継承されていくってことか?
 大家族の絆を描きたかったなら、それを示すエピソードをきちんと描いて欲しかった。

昔、親族一同が集まった時の郷愁は誘う。
広い空。
目に優しい緑と吹き抜けていく風。
かってなことを押し付けてくる親戚。うるさいチビども。
開放的でありながら、enmeshmentな関係。
雑多な雰囲気はよく出ている。

と、あ”あ”と頭を抱えるところ満載なのだが、キングカズマと言い、女神降臨シーンと言い、暗算シーンといい、爽快感で終わる。

真夏の一夜の夢物語としては最高。

とみいじょん