劇場公開日 2010年1月30日

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「心に沁みる、温かい映画」おとうと ダース平太さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5心に沁みる、温かい映画

2010年1月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

笑える

幸せ

齢80になろうとする山田洋次が描く物語だから、妙に行儀のいい家族や古臭い演出がある感は否めない。だけれどもさすがは名匠、それを細やかな演出でもってカバーし、時代を超えた物語として成立させている。

 また、役者陣が素晴らしい。吉永小百合はいつもどおりと言えばいつもどおりだが、終盤、きっと映画の黄金時代を背負ってきた人たちにしか出せないオーラを出す珠玉のシーンがあり、目を奪われる。また、愚かだが、愛嬌があってどこか憎めない弟役に扮した笑福亭鶴瓶が、吉永の前で伸び伸びと芝居をし、終盤に観客を大いに泣かせる。

 と、これだけで終わっていたら年齢層が高めの観客しか楽しめない可能性もあっただろうが、吉永演じる主人公の娘役の蒼井優と、その幼なじみを演じた加瀬亮、この若い2人のパートが大ベテランたちに負けないくらい素晴らしいので、誰しもが楽しめる映画として成立しているのだ。

陳腐な言い方になってしまうが、鶴瓶扮する弟の抜けぶりに大いに笑い、横暴な行動に大いに腹を立て、そして彼を見守る姉とその家族の温かさと絆に大いに涙した。映画を観ながら、自分の家族にも思いを馳せる、そういう心に沁みる、温かい映画でした。

ダース平太