劇場公開日 2009年4月25日

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「車が欲しくなる」グラン・トリノ オレさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5車が欲しくなる

2016年10月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

妻に先立たれ、息子家族からも煙たがられていた昔気質な頑固オヤジ、ウォルトが隣に引っ越してきたモン族の少年タオやその家族らとの交流を通して少しずつその考えを変えて行く様子を暖かくそして残酷に描いた作品。

酒とタバコと愛犬と庭の手入れ、そして50年勤め上げたフォードで自身も部品の取り付けに関わったグラン・トリノを乗り回すでもなくピカピカに磨き上げ、満足そうに眺める。
その楽しみだけをとても満足そうに、しかし仏頂面に演じるは名監督クリントイーストウッド。60年代から映画業を続ける彼を俳優として観たのは恥ずかしながら今回が初めて。
190を超える上背、ギラついた眼光、ハゲそうでハゲない頭。とても80手前の人間には見えない容姿。声も低くてしゃがれててカッコいい。

散々クロだのイエローだの差別用語を連発したり、たまに会う友人たちとは憎まれ口しか叩かなかったりの頑固オヤジが赤の他人、しかも国籍も民族も違う人々と心を通わせていく姿は見ててとても心和む。
酔っ払って気分良くなればベラベラ喋るし、子ども相手にも臆することなく接する姿は見ててかわいいおじいちゃん笑。
急に気に入られてモン語?で何言ってるかわからないおばちゃん達から食べてる最中にメシを追加されていくシーンはすごく笑えるお気に入りのシーン。

ただの老人と異国の少年の交流を描いただけではなく、しっかりと男の生き様を描いている点も良い。
「アメリカの男」とは?を見事に体現し、タオにもそれを叩き込む。男らしさを学ぶの件は悪影響の予感しかなかったがあんな物騒な街ではあれくらいの度胸で生きていかなければいけないんだろう。
ラスト不良どもの家に乗り込む前に身支度を整える姿が最高に渋い。スーツ新調してるシーンなんか最高にクール。ここだけでウルってくる笑。
何よりもクールなのが指で銃を構えるあの仕草。にわかのためダーティハリーをまったく知らないが調べてみるといろいろとオマージュがある様子。古くからのファンからしたらあの仕草はたまんないんだろうなぁ。

40年以上に渡り俳優として活躍してきた男の集大成が伺える名作。
この生き方には憧れる。が、酒もタバコも全然で向いてなくて悲しくなる笑。

オレ