劇場公開日 2009年4月25日

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「素晴らしい!批評通りの傑作です!」グラン・トリノ 愛すれど心さびしくさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0素晴らしい!批評通りの傑作です!

2009年2月6日

泣ける

一昨日の試写会で観ましたが、もうこんなに素晴らしい映画に出会えるなんて 今年は幸先がいいですなあ!
「ベンジャミン・バトン」とともに 早くも今年のベスト5に入るような作品を観ることが出来て 幸せです!
映画作家としてのクリント・イーストウッドが「硫黄島からの手紙」に続けて 日本人の立場からしても関心を持たざるを得ないこのような作品を作り続けている時代に自分も映画ファンとして立ち会えることか出来て本当に良かったと思わざるを得ません!
クリント・イーストウッドの優しい眼差しがセリフひとつひとつに宿っているようで あの人はもう天才ですね。
全米では今年早々の公開でNO.1の興行成績ですが 今もってこんなに地味な題材で しかもアジア系移民のネタで多くのアメリカ人を集めてしまうなんて やっぱりアメリカの良心は生きているって証なのでしょうか?オバマの影響が少なからずあるのでしょうか?!
銀落としというらしいですが、現像の段階でわざと全編をシリアスなまでにくすんだ色調に押さえ込んでいるのですが、舞台である自動車メーカーの本拠地という設定にぴったり。
現代のアメリカを象徴しているような住宅街で起こる ある悲劇を描いています。全米の批評のとおり これは「ダーティハリー」のキャラハン刑事の後日談のようなストーリー展開にあの時代を知る映画ファンは必ず納得するはず。
無名俳優たちが多いようですが、キャスティングもうまい!
とにかく 昔で言えば「卒業」のように登場する人たちの性格やら 顔立ちまでもが わかり易く誰にでも素直にこの街の住人になって 入り込んでしまえますね。
主人公は長年フォードに勤めていたにもかかわらず 溝が出来ている息子は日本車のセールスマンをしているという設定なので 主人公の愛妻を亡くしての葬儀のシーンから始まって映画のいたるところに「イエローモンキー」を代表とするような人種差別語のオンパレード!
これが自動車の街の現実の姿なのでしょうが これでもかと白人至上主義の塊のような頑固一徹な親父の性格が披露されていきます。
隣に引っ越してきていても それが大嫌いなアジア人であるという理由から一切の関わりを持とうとしない主人公が ある事件からこの隣家の青年と心を通わせていくわけですが そのプロセスのなんとも面白いこと。セリフひとつひとつが実に大切な映画でもあります。
それは 理解のない味気ない身内より あれだけ大嫌いだったアジア人の一家に安らぎと自分に生きる証を見つけていく主人公の心の変化が そのセリフひとつひとつの変化とともに わかりやすくこちらに伝わってくるからです。
ですから 後から思いだせば この映画で使われる差別用語のなんと多いこと! コメディタッチに ここまでポンポン使われると いい加減観る側も麻痺してしまうぐらいです。だが、しかしそれだからこそ衝撃
のラストでの印象が更に深まるようにしくんであるわけで・・・
でも決してそれもわざとらしくはありません。
邦画ならついつい お涙頂戴的になる展開ではありますが 爽やかな涙で目頭が熱くなってしまうこと請け合いです。
さすがイーストウッドらしく アジア人差別といっても 日本車などストーリー展開上日本をあて付けにするセリフは出しながらも「頭のいいアジア人」というセリフなど そのあたりは興行的にも日本など特定のアジアの国を選んではおらず、隣家のアジア人自体にモン族という少数民族を持ってきている点で アジア各国からの批判も出ないように配慮していますね。
テーマでもある「グラン・トリノ」という名クラシックカーの登場のさせかたも 観ている最中は物足りなさを感じてちょっと疑問を感じる部分はあるのですが、緻密に計算されている脚本だから盛り上がるようにしっかり計算されていて結局はそれが成功しているわけです。

とにかく 俳優人生の最終章にさしかかったイーストウッドが そのシナリオを読んで 納得共感して 監督・主演を即座に決めたというこの才能ある新人脚本家にも注目です。
題材的にも日本でも大ヒットして欲しい作品です!
必見です!

愛すれど心さびしく