劇場公開日 2009年5月16日

  • 予告編を見る

「人生での新しい選択と、元の縁を大切にする生き様との葛藤性の物語も、エンディングの演出で…」60歳のラブレター KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0人生での新しい選択と、元の縁を大切にする生き様との葛藤性の物語も、エンディングの演出で…

2024年4月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

作品を絞って観ざるを得ない年齢に達し、
世間での評価からすると
本来ならパスしていたはずの作品なのだが、
「60歳のラブレター」とのタイトル名に、
まだまだ残りの人生にときめきが欲しいとの
未練があるのか、ついつい観てしまった。

社会での成功者は何かにつけて
己の実力と勘違いしたり、
にもかかわらず
上から目線的な人格が形成されること、
また、人生の学びの場面では
年齢的な序列を超えること、
等々に考えさせられる展開の中、
特に強く感じられたのが、
人生における新しい選択と
元の縁を大切にする生き様との
葛藤性だった。
そんな展開に、中盤までは、
己の人生と重ね合わせて
それなりに面白く観させて頂いた。

特に、イッセー尾形の夫が欲しかったギター
を買ったのが妻の綾戸智恵であったことと、
そのギターでの妻の再起を願っての病院での
弾き語りのシーンは感動的だった。

しかし、この作品の欠点は、
3組の行く末を最後まで
描き切ってしまったことだろう。
しかも、いわゆる臭い演出で。

解説では、銀行のキャンペーンで
集めた実話をまとめた作品とあった。
しかし、たとえたくさんのハッピーエンドが
あったのだとしても、
それをそのままダイレクトに描いては、
作品としての深みを
得ること出来ないのではないだろうか。

最後を描かずに、
あえて観客にその解釈を委ねた映画は
「スリー・ビルボード」をはじめとして、
たくさんの名作がある。

観客の想像力を信じて、
エンディングでの蛇足的に感じる
3組の成り行きのカットで
もう少し短時間にまとめていたら、
この作品もそれなりに
より評価されていたのではないだろうか。

KENZO一級建築士事務所