劇場公開日 2009年4月18日

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「とってもピュアな青春感動作品。綾瀬はるかのノリツッコミぶりは、コメディエンヌとして天才的素質を感じさせてくれます。」おっぱいバレー 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5とってもピュアな青春感動作品。綾瀬はるかのノリツッコミぶりは、コメディエンヌとして天才的素質を感じさせてくれます。

2009年4月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 企画は以前から知っていました。たわいもない話が、ここまでドラマアップできるものかと驚きました。面白かったです。
 なんと言っても、綾瀬はるかのノリツッコミぶりは、コメディエンヌとして天才的素質を感じさせてくれます。甲高い声に勝ち気な性格で、そんなに簡単に見せられないわよと決めぜりふをまくし立てると、分かっていても可笑しさがこみ上げました。まさにはまり役。最初に、おっぱい見せてと生徒達に約束の条件を聞かされるときの目が点になる表情が、何とも珍妙でした。
 そして生徒達とのおっぱいを巡る攻防。一生懸命断ろうとしているのに、『嘘つき』のトラウマもあって、NOといえないジレンマぶりも絶妙でしたね。

 原作は、生徒視線で描かれているようですが、本作では美香子先生視線でストーリーが展開されます。それは美香子自身の教師としての成長する物語でした。
 美香子は中学三年の頃万引きして、一週間作文自習の処分となり、高村光太郎の『道程』と言う詩に巡り会って、国語の先生になろうとした経過が触れられています。(生徒達は、『道程』が好き!という美香子の言葉を勘違いしてましたけど。)
 このときの担当教官の心のこもった美香子への指導が、後半になって明かされるとき、思わずジンときました。いい話なんです。
 一見本筋から外れているエピソードですが、美香子がバレー指導にのめり込んでしまう伏線として、無駄になっていません。

 美香子にとって『嘘つき』のトラウマは、転勤せざるを得なくなるくらい深刻なものでした。前任校では、生徒と交わした約束が反故にしただけでなく、約束していないと生徒の面前で嘘をついたのです。授業中に生徒から嘘つきと面罵された一言が心に焼き付いていたのです。
 それがおぱっいの約束を単なる冗談では済まされないところに美香子を追い込んでいたのでした。おぱっいの約束が学校上層部の知るところとなり、美香子に約束があったのかどうか問われるとき、美香子がどんな返事をしたのかが本作の見所の一つになっています。

 そして男子バレー部に集う生徒達は、冒頭のシーンからおっぱいバカのパワーを全開させます。若くてきれいな先生は、昔から男子生徒の憧れの的でしたが、そこにおっぱいが加わることによって、尋常ではないパワーが爆発したわけです。動機は不純だけど、彼らがチームとしてまとまっていく姿、頑張る姿は泣けるほど純粋でしたね。
 『道程』の詩にある通り、何かを頑張るための目的は何でもいいじゃあありませんか。連中を見ていると凄く勇気が湧いてくる作品です。
 そして生徒たちが対峙するのは、県内屈指の強豪チーム。1セットは奪ったものの、なんと相手は2軍。最終セットに登場した1軍相手にどう奮闘するのか見物です。
 チームのかけ声は、「おっぱい」。おっぱい連呼で、おっぱいを見事見れるのか?
 但し、そこはおっぱい命の連中。ちゃんと負けたときのための驚きの対策を練っていたようです。転んでもタダでは起きないしたたかさというか、ホントバカな奴らですね。

 ストーリーが70年代のため、当時のヒットナンバーが全編を彩りします。ストーリーとのマッチングもよく世代に関係なく元気づけられることでしょう。もう永井龍雲なんて知らないだろうなぁ~。
 あと鉄道オタクには、劇中頻繁に出てくる今はなき西鉄北九州線が懐かしい。ROBOTの製作だけれどCGでなく、残存した筑豊電鉄の車両を塗色変更して対応しています。

 劇中詩『道程』 高村光太郎
 僕の前に道はない
 僕の後ろに道は出来る
 ああ、自然よ
 父よ
 僕を一人立ちにさせた広大な父よ
 僕から目を離さないで守る事をせよ
 常に父の気魄を僕に充たせよ
 この遠い道程のため
 この遠い道程のため

流山の小地蔵