劇場公開日 2009年2月14日

  • 予告編を見る

「キアヌは、クールだけれど本作のようなジャンルではヤサオトコ過ぎます。むしろ本作では、ラドローの上司ワンダー警部を演じたフォレスト・ウィテカーの存在感がすごかった」フェイク シティ ある男のルール 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5キアヌは、クールだけれど本作のようなジャンルではヤサオトコ過ぎます。むしろ本作では、ラドローの上司ワンダー警部を演じたフォレスト・ウィテカーの存在感がすごかった

2009年2月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 『24』シリーズを見ているファンにとって、善と悪が交差し合い、どんでん返ししていくストーリーは見慣れたもの。主人公ラドロー刑事の同僚のワシントン刑事を殺したとされる犯人が殺されていたあたりから、先が読めてしまいました。
 このオトコがまさかと思っていたのがとんでもなくなる話は、『24』シリーズではつきものだから、少々のことでは驚きませぬ。
 とにかく本作はFOX配給。主人公の設定も、ロス市警の刑事役。しかも事件解決のためには手段を選ばず、強引なやり方を貫き通すところ。さらに不倫した妻が急死したトラウマから酒浸りの日々など、ジャック・バウアーにすごく似ているキャラなんです。
 違うとしたらクールさ。派手なアクションの中も、キアヌらしい持ち味で、さめた表情を見せるのです。これまでも無表情なシーンはあったものの、プロフェッショナルに徹しているキアヌは他に見られないでしょう。
 だけど、クライム・アクションでは、クールさばかりって合わないと思うのですよ。やっぱり熱いところもなくってはね。その辺のところがジャック・バウアーが支持されているところではないかと思います。ボーンシリーズでも、アクションでは感情むき出しにぶつかっていきますからね。

 ネタバレ前提で書き込みしていますが、本作は筋をばらすとつまらなくなりますから秘密です。
 あえて触れるなら、どんでん返しに向けた伏線をもっと強化すべきだということです。 かつて相棒で親友だったワシントン刑事との対立のエピソード。取っ組み合いぐらいの喧嘩シーンがあってもよかったでしょう。
 署内の不正を取り締まる内部調査部のビックスは、執拗にラドローにつきまといますがもっと嫌らしく絡ませて、ラドローの捜査を妨害するとか不正の元締めを臭わせるくらいのあくどさを発揮させて置くべきでした。ビックスが中盤で余り登場しなくなったため、ずいぶん物語のからくりが見えやすくなってしまいました。

 結論から言うと、キャストはキアヌでなくて、キーファー・サザーランドのほうがこの作品にはあっていると思います。
 キアヌは、クールだけれど本作のようなジャンルではヤサオトコ過ぎます。むしろ本作では、ラドローの上司ワンダー警部を演じたフォレスト・ウィテカーの存在感がすごかったです。
 ワンダー警部がとあることで、ある人物にピストルを突きつけられ生命のピンチに陥るときの、感情むき出しの表情が忘れられません。完全に主役を喰っていましたね。
 そしてラドローが敬愛して止まないワンダー警部を助けることができるかどうかも後半の見所です。

流山の小地蔵