劇場公開日 2008年6月7日

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「私史上、最高レベルの「ラヴ・シーン」!長回しのアンサンブル必見。」ぐるりのこと。 ジョルジュ・トーニオさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5私史上、最高レベルの「ラヴ・シーン」!長回しのアンサンブル必見。

2008年6月25日

泣ける

笑える

<ストーリー>
靴修理屋で働いているカナオは翔子と結婚している。裕福でもなく、妻はいろいろ口うるさいが、だらしなくも何とかやっている。そんなカナオは先輩の紹介で法廷画家の仕事を始める。妊娠中の翔子は安定しない仕事に不安も覚えるが、今は子供の誕生への喜びのほうが大きい。

しかし子供は流産してしまい、翔子は少しずつ精神のバランスを失っていく。

<個人的戯言>
とにかくリリー・フランキーと木村多江がいいです。

だらしなく、
決して感情表現のうまいとはいえないが、
どんな状態でも妻を受け止める夫役が、
ずぶの素人であるリリー・フランキーに見事にはまりました。
しかも時折見せる「本気」がいいアクセントになって、

「結構演技計算してる?」

とさえ思わせます。

木村多江も、

そんなかなり癖のある共演者とのアンサンブルを、
互いのユーモアのセンスも相まって、
実にイキイキと演じていて、

この二人のシーンは長回しが多いのですが、
とにかく幸せな感じが伝わります。

そして更に流産して
徐々に精神のバランスを崩していき、
ついに感情が爆発するシーンはほんと凄かった。
このシーンは
私の数少ないラヴ・ストーリー鑑賞歴の中で、
1位、2位を争う「ラヴ・シーン」になりました。

一方で並行していく妻の家族の話が、
とても現実的で下世話な分とてもリアルで、
うまく主人公二人の話と対になっているような気がしますし、
最終的には主人公二人が夫婦として生きていくことが、どういうことなのかを与えるようなものになっています。

妻の家族の話が落ち着くところに落ち着いた後の、
ちょっと不意打ちにも思える、
妻の母親からの義理の息子への言葉に・・・感涙。

法廷画家という設定は、
様々な実際の事件を思わすような裁判を振りかえる中で、
この夫婦の「歴史」を辿るようになっていますし、
妻の妊娠とは、
「生死」ということで、
かすかな繋がりは匂わせているようで、
一定の効果はあったと思います。
チョイ役の「被告人」たちが超豪華なのはかなりな特典です。

「食べた!」(by宮崎勤風加瀬亮)

全篇に渡る小ネタやHネタは、
ゆるくもどこか微笑ましいものが多く、
最後はほっこり感に包まれる作品です。

ジョルジュ・トーニオ