劇場公開日 2008年7月5日

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「人生なんて変わらない?でもベタだけど、ちょっと親子の情に触れて、ちょっとだけいい気持ちにされてくれますよ。」純喫茶磯辺 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5人生なんて変わらない?でもベタだけど、ちょっと親子の情に触れて、ちょっとだけいい気持ちにされてくれますよ。

2008年6月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 この作品でまず飛び込むのは、宮迫演じるテキトーな性格のダメ親父ぶり。お見事です!というか、素まんまじゃないか!本人もそう言っているし。
 この父親の所業を見まして、まぁ親の遺産など不労所得が入ると、人はこうも怠け者になるのであろうかと実感できました。
 散々怠惰な日々を過ごしたあげく思いついた商売が喫茶店。これがまたなんとベタなこと。よくぞここまで在りし日の場末の喫茶店を復古できたものかと感心しましたねぇ。
 このレトロな喫茶店とその店のマドンナとなった素子を中心に、ドラマが展開します。彼女目当てに集まる客も、濃いキャラばかり。
 これでもかという、オーバーアクション気味のベタな演技には、さすがもとアングラ系の映画出身監督なだけに独特のペーソスを感じさせるものがあります。その辺がクセになるか、生理的に受け付けないか、人によってきわどい差になるでしょう。
 ただ小ネタの笑いを全編にちらばせて、笑われてくれるので退屈はしません。コントとアングラ映画と松竹大船人情ものを足して3で割ったような感じでしょうか。
 結局中途半端な父親が変わるわけでもないし、喫茶店を一夏の映画を描いたところで、人生なんて変わらない、ベタな作品だなぁ~と思いながらみておったわけです。

 ところが、ひとつだけ見所がありましたよ。
 それは娘の咲子と父裕次郎の関係。子供も女子高生ともなると、父親とコミュニケーションがとりづらくなるものです。作品でも、この微妙なズレが良く出ていました。
 裕次郎の馬鹿さ加減にあきれ、きついため口を浴びせる咲子だったのです。そんなしょうもない奴でも、やっぱり父親。所々で、裕次郎に相談を持ちかけようとしたりするところに、この子はやっぱりお父さんのことが好きで、頼りにしているのだなと感じさせてくれました。
 それと別れたお母さんとの復縁を持ちかけようとするのになかなか素直に言え出せないもどかしい咲子の気持ちにも共感できました。また三人で住もうよというのが精一杯で、「淋しい」って言えないのは、やせ我慢なのでしょうか。
 同じ年頃の親子で見に行ったら、きっとお互いの気持ちの足りないところを語り合うきっかけになることでしょう。
 感情の起伏が激しい咲子を演じきった仲里依紗の演技力に大注目すべきでしょう。大女優としてブレークする予感をさせる演技でした。
 そして、清純派麻生久美子の思いがけない強烈な台詞もインパクトありました。

流山の小地蔵