劇場公開日 2009年4月18日

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「たくさんの ミルクになれない者たちへ」ミルク マージョさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0たくさんの ミルクになれない者たちへ

2009年8月26日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

うろ覚えだが数年前、米国で男相手の痴漢常習犯が捕まった。妻子と孫ある議員、さらにゲイ排斥運動の急先鋒とか。
人は色々な顔を持つ。ショーン・ペンも、実在のゲイ活動家の顔を演じ分ける。
聴衆の前では不敵で確信的なリーダー。政治の舞台では、人脈と大統領選をも左右するマイノリティ票が武器の、したたかなやり手。
仲間うちでは、面倒見良く気さくな友人。恋人には、夢にかかりきりの薄情者。そして一人の時は、暗殺に怯える孤独な中年男。
ゲイの聖人と言われる主人公ミルクをありのまま。映画は、その手法が反勢力を刺激しすぎ、また逆差別を生みかねなかった恐れをも示唆する。
ただ70年代当時、ミルクを支持した人々は、必ずしもゲイばかりではない。
ショーン・ペンは腹の底から叫ぶ。「君達を勧誘する」「隠れるな」「愛する者に、本当の自分を知ってもらおう」
冒頭の議員は確か60過ぎ。若い頃、おそらく国のどこかで、ミルクの活動を見ていたろう。
認めたくない真実を、心のクロゼットから引っ張り出す。ゲイ・ストレートに関わらず世の中は、一生ミルクのような勇気を持てない者がマジョリティだ。もちろん私も含め。
だからこそ40年前、不惑のミルクの決断が、大勢の人々をとらえたのだと思う。握手を拒まれ道端で殴られ、家族に嫌われようとも、自分を嫌いになるなと。
希望をつかみかけながら倒れた男の物語。それでも普遍的だから響き続けるだろう。彼が好きだったオペラの歌声のように。

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マージョ