劇場公開日 2010年1月23日

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「渾身の遺作。」Dr.パルナサスの鏡 mori2さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5渾身の遺作。

2010年1月14日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

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“鬼才・テリー・ギリアム監督、待望の新作”。本作は、「ダークナイト」でオスカーを受賞した、ヒース・レジャーの遺作でもあります。撮影期間中に急逝してしまったヒース。製作中止の危機を救ったのは、ヒースの友人だった“3人のハリウッド・スター”でした。

 予算が膨大に膨れ上がったり、スタジオと揉めたり、セットが壊れたり、何かとトラブルに見舞われることが多い(って言うか“恒例行事化”してるような…(^^;)テリー・ギリアム監督ですが、“撮影途上での主演俳優の死”という今回の悲劇は、かつて遭遇したどのトラブルよりも、困難でショッキングだったと思われます。通常であれば、製作中止となるところです(いや普通に考えたら、絶対作れませんから!)。ヒースが亡くなったのは、トニーが現実世界にいるシーンを、すべて撮影した後。残っていたのは、トニーが鏡の中の幻想世界に入るシーンでした。そこで鬼才・ギリアムは、素晴らしいアイデアを思いついたのです。『鏡の中では、観客の願望により、トニーのルックスは変化する…』これなら、代役を立てれば映画も完成し、ヒースの最後の演技もお蔵入りになりません。そして前述した“3人のハリウッド・スター”がギリアム監督の許に馳せ参じたのです。ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレル…普通の映画なら『どんだけ豪華やねん!』とツッコんでしまうところですが、彼らは皆『ヒースの演技を必ず世に出さなくてはならない』という思いの下に、出演を快諾したのです。この映画に対する、ヒースとギリアム監督の思いが実った、素晴らしい結果だと思います。

 映画の内容としては、毎度おなじみ『ギリアム節、全開!』となっておりまして、何とも上手く表現のしようがない“幻想的なトンデモ映像”と、魅力的なんだろうけれども奇想天外すぎて、こちらも何とも表現のしようがない“非常に難解なストーリー”とで構成されておりますので(一言で言っちゃうと『よ~、わからん映画です(^^;!』)、デート・ムービーなんかには、あまりおすすめ出来ません。『イケメンがたくさん出てる~!』程度の予備知識で観に行かれると、大変な目に遭われるかもしれません。しかしこの映画、完成に至るまでの“劇的な物語(実話)”を知った上でご覧になると、非常に感慨深い1本に感じられることだと思います。いろんな意味で話題になる映画ですね。

mori2