劇場公開日 2010年6月4日

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「家族だからこその、深い赦し」マイ・ブラザー めぐ吉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5家族だからこその、深い赦し

2010年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

正直に言うと、あまり期待をしないで観にいったのですが、、、
ものすごーーーーーーく良かったです。
と思ったら、監督はジム・シェリダン。納得です。

『ある愛の風景』というデンマーク映画のリメイクだそうですが、
それを戦争で受けた心の傷(父はベトナム戦争、兄はアフガニスタン)のために
崩壊し、やがて再生していく家族の姿を描いています。

でも、私がなんといっても心引かれたのは、
父のあとをついで軍人となった“優等生”の兄といつも比べられ、
「お前はいつまでたっても、、、」と
苦々しい顔で負け犬扱いされる弟トミー(ジェイク・ギレンホール)。

確かに、彼は銀行強盗をして刑務所に入っていたり、
ややキレやすかったりと問題は多々あるものの、
彼の根底にあるのは、純粋さとやさしさ。
でもきっと、そんな“弱さ”や“甘さ”と表裏一体の資質は、
アメリカの(特に田舎)ではマイナスにしかならず、
とても生きにくい…ということが伝わってきます。

父が行った戦争、そして兄が行く戦争に対して彼だけは、
「どこかおかしい」と冷静な目で見ています。
でも、かえってそれゆえに父からは、
「口ばかり達者にいっぱしのこと言いやがって」と
疎まれてしまいます。
自分や兄のように、
国のやることに疑問を持たず、国のために戦うことこそ、
男であり、正しいことである、と。

ますますぎくしゃくする親子関係、、、

しかし、兄サムがアフガニスタンで“戦死”したと
訃報が届いたとき、
トミーの優しさが輝きます。

美しい兄嫁グレースを気遣い、姪っこたちをかわいがる束の間の幸せ。

ところがある日、捕虜となっていたサムが帰還し、
そんな平穏な日々は終わりを告げます。

帰ってきたサムは、ちょっとしたことにもピリピリと神経質になり
まるで別人のように変貌しています。
実はサムはタリバンの捕虜となり、人格さえ崩壊してしまうような
“あること”を強いられていたのです。

「こんなパパより、トミーおじさんのがいい!」と泣き叫ぶ娘。

家族がバラバラになってしまうのか、、、という緊張感の後に、
家族だからこその深い赦しが訪れます。

そんな赦しにたどりつくまでには、さらけ出す勇気が必要なのですね。
そして、それを受け止める勇気も。

正直、私が暮らしてきた家族にはなかった(今後もあるとは思えない、、、)ので、ここまで家族とゆうのは赦しあえるのか、と
感動しつつ、深く、家族のあり方を考えさせられました。

めぐ吉