劇場公開日 2008年5月10日

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「モンスターパニックとしては楽しい」ミスト ツァラさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5モンスターパニックとしては楽しい

2018年12月8日
Androidアプリから投稿

原作未読。
基本的には楽しめたが、気になることがいくつかある。

①デイビッドのキャラクター
霧が発生してスーパーに閉じこもってから妻のことを気にする様子があまりない。
言葉では心配していたり息子の母親を心配するに言葉に反応している場面はあるが、真に迫った行動はしていない。電話も繋がらないし気が気でないくらいでもおかしくないだろうに。夫婦仲は良さそうに見えたが……。その割には後で家を見に行って泣くし。
普通だったら息子をスーパーに預けてでも助けに行ってもいいくらいでは?
危険だし息子が大事だから行けないのはわかるけど試みもしないかね。

②決断が早すぎる
いやあんたら車で逃げてからデカい怪物を見ただけで一回も襲われてないでしょ?むしろスーパー周辺だけ怪物が集まってるのかってくらい静かだったじゃん。
死ぬ決断早すぎない?
つうかあの状況で満場一致で死を選ぶのか?誰か一人くらい意見違ってもおかしくないっしょ。
特に爺さん婆さんはめちゃくちゃ逞しかっただけに違和感がすごい。
あの全く危機も迫ってない状況で大事な息子を撃ち殺すかね。

③小説が映画化される際の問題
小説では描写の間時間が止まっているからだと思うが、登場人物がとにかくボーッとしている。
最初にシャッターを開けるシーンでは、受けの美学でもあるのかっていうくらい一通りタコの攻撃を食らってからシャッターを閉めろ!とか言い出す。
その間二人は叫びながら座ってるだけ。
薬局の中でも一通りクモの攻撃を突っ立って食らってから逃げ出す。
オリーが怪物に襲われるシーンもなぜか突っ立って見上げている。とにかくいちいち小説のように時間が止まる。

最初の夜、虫が来るのに馬鹿みたいに灯りをつけて回る。一応「怪物が侵入したとき等非常時にしか電気をつけるな」という風なエクスキューズは事前にあるけど、それにしても映像で見ると馬鹿にしか見えない。小説では気にならない描写なんだろうけども。
いやそもそも怪物がいるってんだから灯りぐらい消せと。忍べと。

とってつけたような軍人と店員の恋愛描写。キスシーンの直後女は死ぬが、死んだ後も軍人は感情ないのかってくらい取り乱さないし、昔からの恋が実った直後に相手が死んだっていう悲しみと罪悪感から軍の計画をつらつらと話しだす……みたいな展開でもないから、あの恋愛描写必要あるかと思ってしまった。
小説ではしっかり意味のあるように描写されてるのだろうか。
書いてて思ったけど、軍人二人が仲良く首吊るのも謎。罪悪感から自殺っていうけど話の展開のために殺したようにしか見えない。だってやったのは科学者なんでしょ?

ラストの後味が語られがちな映画だと思うが、その不条理さというか理不尽さに後味が悪いっていうのではなくて、いやいやもっとできたでしょ?ガソリンなくなる前にいくらでも手に入れるチャンスあったでしょ?ガソリンスタンドに行ってみるとか他の車からとるとかさぁ。できる限りのことやったって言うけどやってねぇじゃん!諦めも早いからそりゃそうなるよ!!おバカ!!っていう後味の悪さ。
まああえて正統派の後味の悪さを挙げるなら、自分を助けてくれないからって「地獄に墜ちろ」と捨て台詞を吐いたウォーキングデッドのキャロル役のおばさんが生き残ってたところ。
自分の都合で危険な中を送ってけって言って断られたら地獄に墜ちろって酷くねぇか……?
宗教おばさんは振り切ってたからむしろ面白キャラクターとして楽しめたけど。ちゃんと死ぬし。

突っ込み所は多々あるけど、ラストの突き放される感じ実は嫌いじゃない。
霧という舞台装置も映像向きで上手く機能してたし、モンスターもいい感じにキモくてよかった。
一番の見所と言ってもいい人々の心理描写もいい。
あの隣人とギスギスしてる感じ、怪物をじれったいくらい信じてくれない感じ、ツナギのやつらの閉鎖的田舎者感とか、コンプレックス感とかおばさんの宗教感とか楽しかった。

楽しかったけどなんか惜しい映画。

ツァラ