劇場公開日 2006年4月8日

「シャーロット・ランプリング」家の鍵 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0シャーロット・ランプリング

2019年1月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 実の父親であるジャンニの喜びと苦悩。心理描写がリアルすぎたおかげで涙を止めることができなかった。

 ジャンニの息子パオロよりも思い障害を持っている女の子の母親シャーロット・ランプリングでしたが、「自分の息子ではない」と嘘をつくジャンニを見透かしたように鋭く助言を与えていました。初めて会ったときから、障害児を抱える親の辛さを訴えるのではなく、本音をさりげなく言うところにドキリとしてしまいました。特に「死んでしまったほうが・・・」などと言うところは、最近よくある介護疲れによる殺人事件をも思い起こさせるのです。

 父親ジャンニ(キム・ロッシ・スチュアート)は今では妻子もあるが、15年前に恋人の死のショックから障害を持ったパオロを手離してしまっていた。その罪悪感もあってパオロを育て上げる決意をするのですが、「自分を父親と認めてくれるのか」という心配がつきまとい、彼への接し方にも苦労が絶えません。リハビリ病院の行事中にパオロがいなくなるという、ちょっとした事件の際、うろたえぶりや最悪のことさえ考えていた様子などは演技がリアルすぎて怖いくらいでした。また、甘やかしたり、気を引こうとしたり、リハビリ中に思わず抱きしめたりと、ぎこちなさいっぱい。パオロの中でいつ父親と認めてくれるのかとハラハラしてしまいました。

 突如、パオロの文通相手の女の子にノルウェーまで会いに行こうと思い立ったジャンニ。ここからのロードムービー風演出によって父と息子が真に向き合うのですが、心と心の隔たりが一気に氷解するかのような一瞬がたまらなく良かった。やっぱり子どもにとって一番の関心事は親なんですよね。

 パオロを演じたアンドレア・ロッシは自然な演技で本当に障害児だと感じたくらい。そして、イギリス人のランプリングはここではドイツ語とイタリア語を喋るのですが、いったい彼女は何ヶ国語喋ることができるんでしょうか・・・すげぇ。

kossy