劇場公開日 1992年5月23日

「自己との、魂との対峙」美しき諍い女 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5自己との、魂との対峙

2019年6月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

萌える

途中で休憩をはさむ映画はインドだけではなかったんだ。

自分の求めるものは何なのか?
否、それは”私”が求めているのか?
それとも、何か大いなる力に描かさせられているのか?
歴史を越えて、人の心を揺さぶる芸術について、よく作り手が語る言葉。
そんな瞬間・過程をひたすら紡いだ映画。

画家とモデルがアトリエで対峙する。そこにその妻や恋人の思惑が絡む。
それだけの筋で、4時間見せ切る。
キャンパスに色を塗りこめる。それだけなのに、なんともいえない緊張がはらむ。
そんなシーンが繰り返される。
それだけで驚嘆すべき映画。

音楽もほとんど自然音。
鄙びた?自然あふれる村に立つ城。
その納屋を改築したアトリエ。ホテルの部屋。
そんな閉塞的な空間と、突き抜けるような空と森、朴訥とした村の佇まい。
その中で巻き起こる登場人物の心の揺れ動き。
それは、たんなる気分ではなくて、生き方にもぐいぐい迫ってくる。
そんな凝縮された部分と、解放感のバランス・間も見事。

最後に画家の取った行動は、傲慢なのか、称賛を捨てて、モデル他周りの人を守った人間性なのか。妻が書き足した十字架がその答えのヒント。
そして、封印された”物”を心に秘めたマリアンヌの変化。人形から、”自分”への脱皮。
芸術論であり、地味なのに濃厚な人間ドラマ。

とはいえ、この長さ。再鑑賞には覚悟がいるし、誰にでもお勧めできる作品ではない。
インスタントな映画を好む人にとっては眠いであろうから駄作となり、
好みがあう人にとっては傑作となる。

P.S.:作品情報で知ったが、
ヒロイン(モデル)は、『MI』の初代ヒロイン・クレアを演じた方なのね。
そして画家は、ドヌーブさんの『昼顔』のあの方。

とみいじょん