劇場公開日 2019年3月17日

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「状況説明が悪くのめり込めない」山猫 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5状況説明が悪くのめり込めない

2019年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

総合:65点 ( ストーリー:50点|キャスト:70点|演出:70点|ビジュアル:80点|音楽:65点 )

 何が起きているのかわからない。ろくに説明がない。どうも戦争が迫っているらしい。だけど登場人物側がどのような立場で、それに対してどのような立場の勢力がいて、どのような利害関係があるのかわからない。ただ将来を左右する岐路にいるのかなというのがわかる程度で、具体的なことが描写されない。いきなり戦っているけれど、背景を理解していないから、何一つのめり込めず、遠い昔にどこかの誰かが誰かと戦っているんだなと遠い目で見てしまう。
 戦いが終わってからも似たり寄ったりで、タンクレディは遠い所で何をしたいのか何をやってきたのかを部屋でちょっと語るだけで、実際の行動は殆ど示されない。物語の躍動感がなく、色々と大変な時代らしいとはいえ日常生活が延々と描写されるだけ。

 そんな場面が変わって舞踏会になると実に華があった。古い伝統のお屋敷で美男美女が舞い踊る姿は豪華で美しい。古いために映像の色は鮮明とは言い難いが、延々と続く舞踏会こそこの映画の見せ場で、ここのみで見る価値がある。点数はここにつける。

 時代が変わり貴族の時代でもなくなり、侯爵は貴族階級と共に時代に置き去りにされる。そして新しい時代には新興の上流階級が支配階級となっていく。そのような雰囲気はわかる。
 だが同じビスコンティ監督の『ベニスの死す』でもそうだが、この監督は設定と物語の展開の描写が情報不足で、雰囲気ばかりを作ることに集中しすぎている。ビスコンティは貴族の出身らしく城で育ったそうだが、貴族の描き方は良く分かっているように見えた。だが物語の描き方が駄目。伝わってこないしのめり込めない。今まで観た中で、ビスコンティ監督作品で面白いと思ったものがない。本作も久しぶりに観なおしてみたが、やはりこの名監督は自分の感性には合わないようだ。

 アラン・ドロンはイタリア語が喋れるのかと思ったら、こちらは吹替らしい。バート・ランカスターは当然吹替。

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Cape God