ロード・ジム

劇場公開日:

解説

ジョセフ・コンラッドの小説を、「渇いた太陽」のリチャード・ブルックスが脚色・監督した人間ドラマ。撮影は「アラビアのロレンス」のフレディ・ヤング、音楽は「戦艦バウンティ」のブロニスロウ・ケイパーが担当した。出演は「アラビアのロレンス」のピーター・オトゥール、「ジンギス・カン」のジェームズ・メイスン、「スエーデンの城」のクルト・ユルゲンス、「青い波紋」のダリア・ラビ、「北京の55日」のポール・ルーカス、「日曜日には鼠を殺せ」のクリスチャン・マルカンのほかに日本から伊丹一三、斎藤達雄など。

1965年製作/アメリカ
原題:Lord Jim
配給:コロムビア
劇場公開日:1965年10月1日

ストーリー

ジム( ピーター・オトゥール) は誰にでも愛される、任務に忠実な男だった。生まれながらに指導者としての資質に恵まれていた。あるとき、ジムは骨折で船をおり回復して貨客船パトナ号の高級船員として契約した。聖地巡礼に向かうマラヤ人を乗せて航海の途中、嵐にあい、船長の呼ぶ声にひかれるように乗客を見捨ててボートに逃れた。海難審判所はジムの船員としての資格を剥奪、彼は文明社会から放逐された。ジムは東南アジアの港を労務者として渡り歩いた。やがて、交易所を営むスタイン( ポール・ルーカス) に見こまれ、可愛がられた。ある日、ジムはパトサンの村へと銃と火薬を運んで川を上った。その奥地にある錫鉱山は「将軍」と呼ばれる男に牛耳られ、村人は奴隷のように酷使されていた。武器は村人が「将軍」と戦うためのものだったが、村長( サイトウ )、その息子(イタミ)らはその倒す術に暗かった。武器を「将軍」に奪われそうになり、ジム自身も拷問にかけられたことから、彼は村人を助けることにした。独特の戦法を考え出し、作戦は成功、「将軍」を倒した。ジムはこのことで再び信用を得、ともに死をのりこえてきた混血の娘(ダリア・ラビ)との間に愛が生まれた。その頃、戦いにまぎれて港町へ逃げた酔いどれのコーネリアスは、ショーンバーグや海賊のブラウンと村に隠されてある財宝を奪おうとした。祭の夜、彼らは邪魔なジムを殺そうとして村長の息子を殺した。ジムは彼らを皆殺しにしたが、友の亡骸を抱く彼の心に、すべてお前の責任だという声があった。一度犯した罪を償うことの難しさを心底思いしらされた。葬式の朝、ジムは自分の銃を村長に渡した。銃声が鳴ったとき、ジムは異国の地に初めて安らぎを得たのである。

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映画レビュー

4.0真の贖罪は名誉回復ではなく、死を賭しても約束を守ることにある

2021年11月27日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

〈主なストーリー〉
ジムは若く希望に溢れた航海士だったが、嵐に巻き込まれ死の恐怖に直面したため、船と乗客を見捨てて逃亡する。卑怯で不名誉な過去を背負った彼は、アジアの某国で暴力的支配を受けている一部族の反乱に協力し、今度は英雄として処遇される。
その後襲撃してきた強盗の一群も見事に撃退するのだが、強盗の首領たちとの撤退交渉の際、「もし強盗団が撤退しないで一人でも殺されたら、自分の生命で償う」と約束していたにも拘わらず、自分の責任で部族リーダーの息子を死なせてしまう。
リーダーは「今夜のうちに出て行け。さもなければ一族の掟により処刑する」と告げ、父親同然の白人老人からも一緒に帰国することを勧められるが、ジムは死刑となることを選択する。

ざっと以上のようなストーリーで、若くして不名誉を負い、落伍者に転落したジムが、自暴自棄になって社会の底辺の労働に従事していく姿や、アジアの部族の反抗に、自分の生命を賭けて協力していくところは、罪人が贖罪により立ち直っていく過程として気持ちがいい。
だから最後に強盗団が来て、たまたま交渉に失敗した結果、部族の若者が殺されてしまったとしても、そしてジムが生命を投げ出すと約束していたとしても、部族の解放により多数の生命を救済した英雄が進んで生命を投げ出す理由はないのではないか、と昔見たときは思ったものだった。

〈贖罪の論理〉
いま改めて見直して、ジムの贖罪の論理を辿ってみると、彼が拘っていたポイントは、英雄となった後も、部族の信頼を失うことを恐れて過去の罪、卑怯で不名誉な業績を隠し通したことにあったのではないかと思う。
ジムの心中を皮肉にも読み切っていたのが強盗団のリーダーで、彼は「あいつには罪を悔い改めた者のいやらしさがぷんぷん臭う。他人の信頼が欲しくてしょうがないのさ」と指摘する。
ここから察するに、ジムは功績をあげ他人の信頼を得たいがために、生命賭けで部族の反抗を助けたのだろう。信頼を失うことが怖くて、過去の罪も隠し続けた。信頼回復=名誉回復のために生命を賭けたのであって、真の贖罪とは別種のものだった。

最後の対話シーンでジムは「行為はたいした意味がない。その理由が大事だ」と語る。恐らく自分のエゴのために部族の若者を殺してしまったことに気づいたジムは、最後に本当の意味での贖罪=名誉回復などではなく死を賭して約束を守ることに決めたのだろう。

それにしてもピーター・オトゥールは、珍しいほど色気のあるいい男優だなと痛感させられる。

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