劇場公開日 1971年4月24日

「【愚かしくも、愛しきアイルランドの人々が、懸命に生きる姿を描いた作品。多用な見方が出来る懐深い作品でもある。】」ライアンの娘 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【愚かしくも、愛しきアイルランドの人々が、懸命に生きる姿を描いた作品。多用な見方が出来る懐深い作品でもある。】

2020年6月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

-舞台は英独戦争が背景にあるので、第一次世界大戦中の英国支配下のアイルランドの田舎であろうか。-

・ ローズ(サラ・マイルズ)は憧れていた教師チャールズ(ロバート・ミッチャム)と結ばれるが、何不自由ない生活が、どこか満たされない。
-彼女が、浜辺に残されたチャールズの足跡の上に自らの足を置きながら歩く姿と、後半、チャールズがローズとドリアン少佐の足跡を見るシーンの対比は印象的である。彼女の姿はアイルランドの哀しい歴史に縛られずに生きようとする新しき価値観を持った人の象徴であろうか。大きな代償は負うことになるが・・。-

・そこに、英独戦争の英雄だが、心理的ダメージを負っているドリアン少佐が赴任して来てローズと恋に落ちる。
-二人の森の中での逢瀬が幻想的な美しさである。ローズの深紅のネッカチーフ、上着と森の鮮やかな緑のコントラストが鮮烈。今作品は海岸の波打ち際の風景も印象的である。ドリアン少佐の退廃的な表情は何を物語っているのであろうか?-

・アイルランド独立のために、密かに武器を集めるゲリラ達を暴風雨の中、手助けするアイルランドの人々。だが、ゲリラ達はドリアン少佐率いる英国軍に捕まり、彼らの怒りは少佐と恋に落ちたローズに向けられる。
-暴風雨の中、海から武器を引き上げるシーンは圧巻である。
又、ローズがドリアン少佐と恋に落ちた事を皆に知らしめてしまう無垢でローズを長年想うマイケルの仕草も、印象的である。-

ドリアン少佐が心の病のため、自ら爆死した後、チャールズとローズは人々の罵声の中、村を出る・・・。
-マイケルはここでも、狂言回し的役割を果たす。又、数少ない知的人物として描かれるコリンズ神父の"分からない・・"と去り行く二人が乗るバスを見ながら言う言葉も心に染みる。-

〈冒頭からラストまで、狂言回しの様に描かれる知的障害があるマイケル(ジョン・ミルズ)の姿がローズの父親、ライアンを始め劇中登場する愚かしくも、愛しき人々を表していると思った作品。多様な見方が出来る作品でもある。〉

NOBU