劇場公開日 1993年5月1日

「見る、そして見られる緊張感」山猫は眠らない つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5見る、そして見られる緊張感

2023年12月7日
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鑑賞方法:DVD/BD

タイトルは知っていたし、一部ファンから支持されていることも知っていた。シリーズがかなり作られていることを最近知って、劇場公開無しとはいえ、そんなに続いているのならさぞ面白いのだろうと観てみることにした。

米軍がまだスナイパーという仕事をよくわかっていなくて、ヘリコプター部隊は夜に来いと言われていたにも関わらず、早い方が良いだろうと勝手に判断して迎えに行くし、上官は射撃が上手いだけの新人を重要な任務に向かわせる。だから現場ではベケットのようなベテランが新人の教育をしなければならないし、育ったスナイパーは米軍での扱いの低さに敵に寝返る。
今ではその重要性を理解し当然しっかりと訓練されているが、スナイパーなんて敵を見つけて撃つだけでしょ?みたいに考えていたのが垣間見れてなかなか楽しかった。

それになにより、90年代の映画といえば、どれだけ銃を乱射するかを競っていたような時代で、その中にあってほとんど撃たないスナイパーを主人公にジャンルの中を移動させることと隠れることを中心に作品を作ったストイックさは称賛すべきだと思う。

キャストに関しては、エリートそうでヘタレそうでもあるミラーを演じたビリー・ゼインは良かったし、頑固で真っ直ぐな堅物がイメージにピッタリのトム・ベレンジャーは更にハマリ役だった。
ベケットの、スナイパーとしてしか居場所がない哀愁みたいなものも味わい深かったと思う。

あと、スコープを覗いているような、スコープ越しの映像は、自分が見ている、あるいは見られているような錯覚に陥って、緊張感を高めるなかなかの演出だった。ただちょっと古くさくて、絵的に綺麗ではないのは残念だったけど、少し古い映画だし予算も少なかっただろうから仕方ないかな。

最後に、終盤に「コマンドー」的なドンパチに変わってしまったけれど、一撃で仕留めるスナイパーの美学みたいなものはギリギリ維持できていたし、面白かった。
ただ、続編はもう観なくてもいいかなとは思う。2と3の予告を観たが、あまり面白そうではなかったしね。

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つとみ