劇場公開日 1980年5月10日

「舞台のヒット作のケッサクコメディに観るセローとトニャッツィの上品な演技」Mr.レディMr.マダム Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5舞台のヒット作のケッサクコメディに観るセローとトニャッツィの上品な演技

2021年7月10日
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鑑賞方法:映画館

ウーマン・リブ運動を反映した女性映画が確立しつつある今、ゲイの自由奔放で切実な生き方をコメディとして描いたフランス映画の斬新さ。元は舞台劇がヒットしたお蔭で映画化されたようだが、オリジナルでは確かに勇気が要ったと想像する。最近コメディのいい作品が無かったので十分楽しませてもらった。この映画を観ながら、ピエトロ・ジェルミの傑作「イタリア式離婚狂騒曲」を想起した。笑いの中に強かな人間表現があり、物語としても優れていたからである。
この映画において最も特筆に値するのは、主人公ザザを演じたミシェル・セローの文字通りのオカマ振りであり、役者として一流の演技を見せてくれる。と言って相手役のウーゴ・トニャッツィが見劣りがする訳ではなく、男性的な外見に一寸した女性の仕草を上手く表現している。彼が男らしいところをセローから要求されて、ジョン・ウェインの格好を真似るところは爆笑してしまった。兎に角この二人の上品な演技のお蔭で、舞台観劇のお楽しみに近い満足感が生まれたと言えるだろう。
エドアール・モリナロ監督は、ラスト15分の畳み掛けた笑いの連続の演出が良かった。ミシェル・ガラブルのアップのカットインは映画ならではの技法で、舞台ではできない表現である。
  1980年 5月25日  ニュー東宝シネマ2

Gustav