劇場公開日 1981年12月19日

「世界観とビジュアル、そして神話的語り口。」マッドマックス2 image_taroさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0世界観とビジュアル、そして神話的語り口。

2024年5月3日
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前作はまだかろうじて人間社会の機能が残っている状態で話が進むが、本作は人間社会が崩壊した状態となっており、そもそもまず物語の前提となるところから異なる。前作は、マックスが人の道を外れていく(人間社会側から、無法者を駆逐するために無法者の側に軸足を移していく)物語だが、本作は既に社会が崩壊した状態に適応しているマックスがいて、暴力に脅かされている小さなコミュニティに出くわしたマックスが手を貸していくというのが基本的な筋書だ。『怒りのデス・ロード』とも共通するが、この出会う人々との関わりが、マックスに人間らしさを取り戻させるきっかけになっていく。

この作品が決定的に強いインパクトを与えたのは、崩壊後の世界のデザインだろう。その世界観とビジュアルが本邦の『北斗の拳』に多大な影響を与えたというのは有名な話だが、ほかにも知らず知らずのうちに影響を受けたに違いない作品は数知れず。本作がエポック・メイキングな一作になったのは間違いないだろう。

だが、私がこの映画をもっとも魅力的にしていると感じたのは、これが伝説的に語り継がれるある強い男についての神話的出来事であるかのような体裁になっているところ。未来の話なのに、「かつてこんな男がいた」的に昔話を語るように始まり、そして終わる。なんとも不思議な気持ちになるが、どうやらミラー監督は神話学の泰斗ジョゼフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』を読み込んでいたというから、そんな体裁になったのかも知れない。

『怒りのデス・ロード』を既に知っている状態で観ると、既に物語の基本形はこの時に完成していたのだな、と気付かされる。しかし、『怒りのデス・ロード』の凄いところは、本作よりもはるかにエモーショナルで、ラストには胸が一杯になって目頭が熱くなるような、壮絶なアクションドラマになっているところだ。そこを踏まえた上で、いま本作を観ると「もう一息!」という気持ちになるのが正直なところであった。

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