劇場公開日 2022年12月30日

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「これぞ美。」美女と野獣(1946) とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0これぞ美。

2018年7月7日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

興奮

萌える

第2次世界大戦直後に制作されたと聞く。

そんなことは微塵も感じさせない豪華さ。動きのたおやかさ。
正直、ヒロインとヒーローは本来私好みの顔ではないのだけど、観ているうちにため息が出る。
品格とはこういうものか。媚びない強さ。

映像美に酔う。
次々に現れる調度。
絹のドレスの衣擦れ。
そして、次はどんな仕草でどんな台詞をどういうのだろう。背筋が伸びるような気がする。

ディズニーがミルキーのようなロマンティックなら、この映画は最高級ワインのようなロマンティック。決して甘いだけではなく、香高く、味わい深く、手ごたえもがっしり。

庶民には絶対手が届かない世界。

ベルの前では紳士的にふるまう野獣の中にある激しさ。
ベルに拒絶されては、森の中で己を傷つける。
己の中の獣性と必死に戦っている。
孤独が際立つ。
そしてさびしさで息絶える。
観ていて切なくなった。受け入れてもらえないってその位苦しい。

ベルは最初から野獣を受け入れているわけではない。
安易に人(野獣)を受け入れずに、己のプライドを保とうとする思慮深い姿。
そのくせ、その衣装で実家に行ったら姉達が嫉妬するでしょ、という無神経さ(?)も持ち合わせている。
でも、約束したことは守ろうとする誠実さ。その約束をした相手が誰であっても。

媚びない、なれ合わない。
だのに、少しずつ心が近づいていく。

そんな二人に、ベルの姉達、求婚者が絡む。一波乱、二波乱。

己の中の獣性。恐れ。高潔。誠実。嫉妬。卑しさ。
この映像美の中に、けっして美しいだけではない、様々な人間の心が渦巻く。
なのに、決して品位を損なわない。
彫刻のように刻み込まれている。

美やロマンティシズムを語るなら、そして本物のゴージャスに浸りたい時に、視聴すべき作品だと思います。

とみいじょん