劇場公開日 1966年12月21日

「今も世界のどこかで燃えているパリ」パリは燃えているか シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5今も世界のどこかで燃えているパリ

2024年3月16日
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80年前のナチスからのパリ解放を描いた戦争ドラマの名作で、ビデオやDVDで観たことはあるけど、短縮版とは言えやっとスクリーンで観られて嬉しいです。パリの破壊と解放を巡り、ナチスのパリ占領司令官、デンマーク領事、レジスタンス、連合軍将校が入り乱れる群像劇を英米仏のスターをカメオ的に使い、記録映像を交えドキュメント風のモノクロで撮影しているのが素晴らしいです。しかし、ルネ・クレマン監督は、随所にフランス人らしいウィット溢れるシーンを散りばめながらも、パリ解放で浮かれたムードに水をかけるシーンも入れてきます。パリ解放寸前で歓喜に沸き立つ兵士や群衆が、一転してドイツ軍の反撃でバタバタと死んでいくシーンは強烈です。レジスタンスや連合軍をヒロイックに描かず、改めてこれは人が死ぬ戦争であること、そして平和を勝ちとるために血が流される現実に一気に引き戻されます。これは、この作品が製作されたのがパリ解放からまだ20年くらいで記憶がまだ生々しかったからかもしれません。それでも、電話から聞こえてくる、パリは燃えているかと言う独裁者の絶叫と、無傷の現在のパリの風景を空撮で描くエンディングは、モーリス・ジャールのうっとりするようなテーマ曲と共に平和であることの尊さを実感します。今も世界のどこかで繰り返されているパリが、1日も早く解放されることを祈ります。役者は、群像劇の中でも、ジャン=ポール・ベルモンドが、どこか飄々とした感じで目立ってました。レジスタンスの若僧なのに、いきなり大臣閣下と呼ばれて慌てるところが微笑ましいです。また、レジスタンスの指導者役のブルーノ・クレメールのアクの強さ、パットン役のカーク・ダグラスのオーラも印象に残ります。

シネマディクト