劇場公開日 1949年9月10日

「シェークスピア劇のオーソリティー、ローレンス・オリビエの模範的ハムレットの演劇映画」ハムレット(1947) Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0シェークスピア劇のオーソリティー、ローレンス・オリビエの模範的ハムレットの演劇映画

2021年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、TV地上波

この作品は、かつてノーカットをNHKテレビで見学して非常に感動した記憶がある。15歳の頃だったか。しかし、ハムレット映画にはもう一つの優れた作品があり、それはグリゴーリ・コージンツェ監督、インノケンティ・スモクトゥノフスキー主演のソビエト映画である。これは一夜にして12歳の少年を映画の魅力の虜にした。このスモクトゥフスキーのハムレット像が心に焼き付いていた為、ローレンス・オリビエのハムレットには、共感よりも芝居の巧さに感動したというのが正直なところ。それで改めて映画館で鑑賞すると、上映時間2時間半の長尺が1時間ぐらいにしか感じなかった。オリビエ演出の完成された演劇映画の集中力のある作劇の中に取り込まれ、操られたような没入感があった。殆ど屋内シーンのセット撮影による、演技を引き立たせる照明の練られた演出設計と、そのモノクロ映像の美しさ。全体的に暗いトーンで統一した世界観のカメラワークが素晴らしかった。シェークスピア演劇の模範的演出と演技の映画作品に隙は無い。唯一、オフェリアが川で溺れ死ぬシーンと埋葬のシーンの屋外の自然な場面になると、描写の迫力が削がれるのが惜しいと感じた。
それにしても、舞台となるエルシアノ城の雰囲気を醸し出すイメージはどうであろう。不気味で神秘的で如何にも13世紀の感じがする。霧のシーンの映像美も卓越している。演劇の面白さと舞台空間が一つに溶け込んだ映像作品だった。演技面では、オリビエと共にベイジル・シドニーの重厚な悪徳演技が秀逸。

  1976年 11月12日  池袋文芸坐

Gustav