劇場公開日 2016年4月9日

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「「食は人を幸せにする」というただひとつの真実」バベットの晩餐会 prishouさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「食は人を幸せにする」というただひとつの真実

2024年1月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

鑑賞後に極上の幸福感を味わえる映画には、そうそう出会えるものではない。

『バベットの晩餐会』を初めて観てから、もう30年以上も経つ。「午前十時の映画祭」でリバイバル上映があるというので、それなりに人生を重ね若い頃に胸を振るわせた作品が、今の自分にはどのように映るののだろう…そんな期待と不安を胸に劇場へ足を運んだ。

まずは美しい田園風景と、慎ましい暮らしの村人たちに、日頃の喧騒を忘れて穏やかな気持ちになる。
敬虔なプロテスタント教徒の姉妹に対し、実ることのない恋心を抱えながら生きていく2人の男の切ない生き様には、心が締め付けられる。

そして、何より、家政婦バベットの、料理人という芸術家としての魂とでもいうべき心意気。これまで語られたエピソードのすべては、この芸術家魂を最高の状態で目の前に見せるためのものだったのだと気付かせる、怒涛のラスト!
バベットの、料理を作り終えた後の佇まいは、どんなヒーローよりもカッコいい。

「悪魔の料理」を味わわないように誓い合った村人たちが、一言も「美味しい」という言葉を発することなく、(料理以外の)会話や表情で、その極上な料理の素晴らしさを表現していく、その見せ方が最高!
滑稽であると共に、「食」は人を幸せにすることができるのだという確固たる真実を突きつけられる。

晩餐会の後、バベットに礼を言う老姉妹とバベットの会話で静かに幕を閉じる。観ているこちらは号泣。エンドロールの間に慌てて涙を拭ったものの、劇場内が明るくなってみると観客は私一人だったんですけど。

30年経っても、やっぱり私にとっては、変わらず、最高の名画でした!(成長してないのか、私…⁈)

prishou