劇場公開日 2024年1月26日

「記憶の奥にある赤いノスタルジア。」ノスタルジア(1983) 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5記憶の奥にある赤いノスタルジア。

2024年2月29日
PCから投稿

思い出話で申し訳ないが、この映画は30年くらい前、友だちの四畳半のアパートで友だちが持っていた擦り切れそうなVHSテープで観た。ほとんど何が映ってるか判別できず、タルコフスキーの映画なんでストーリーを追うことも至難の業だったが、奇跡にまつわる哲学的なファンタジーと捉えてやけに感動した。ノイズだらけの画面はすっかり赤っぽく変色しているが、それもまた、霞がかっった神話的な映像美を思わせて、心に焼き付いた。

で、30年を経て、4K修復版を鑑賞することができて、まあ驚いたのなんの、あまりにも鮮明になった画面はまったく赤っぽくないし、ストーリーが明確になった以外、ほとんど別物のように見えた。自分の中での神秘性は減ってしまったが、それでもやはり名作であり、さりとて自分の中ではもっと素晴らしい名作としてあの赤っぽいVHSが残っている。そんな経験も含めて映画だと思うし、誰もが心に自分バージョンを持っていていいのではないかと思う。

村山章