劇場公開日 1976年12月11日

「子供たちの情景に笑顔と慈しみこみ上げる」トリュフォーの思春期 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0子供たちの情景に笑顔と慈しみこみ上げる

2021年10月31日
PCから投稿

トリュフォーが手がける作品の特徴として「子供たち」というモチーフは代表的なもの。中でも本作は、年端もいかない子供たちが学校や家庭で繰り広げる情景をユーモラスかつ生き生きと描き出していて心掴まれる。子供らの様々な表情をパッチワーク的に織り込む構成ながら、家庭内に問題を抱えた少年の存在が一つのフックとなり、彼を巡り教師が子供らに語りかける言葉にトリュフォーの思いがギュッと凝縮されていたように思う。「大人は判ってくれない」では主人公の少年に少なからず自身を投影させたトリュフォーだが、「野性の少年」では子を導く父親の視点になり、さらにこの「思春期」ではおじいちゃんのような視点になったとも語っている。映像からほとばしる温もりや状況を広く俯瞰する視座もそういった心境の賜物なのかも。ちなみにスピルバーグの「E.T.」で印象的な学校の情景(カエル、反逆、キス)に微かな本作の影響を感じるのは私だけだろうか。

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牛津厚信