劇場公開日 1977年7月2日

「とてつもない戦争映画!」遠すぎた橋 Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0とてつもない戦争映画!

2024年4月20日
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鑑賞方法:その他

楽しい

興奮

難しい

1977年公開。
封切と同時に劇場で鑑賞したが、あの映画を予備知識ナシに一回で理解できる人は地球外生命体と言えるのではないだろうか。。。

人名、地名、国名、所属部隊名、上下関係…etc

史上最大の空陸連携を実現し、華々しく大失敗に終わった「マーケット・ガーデン作戦」について詳細に理解した後に見ても、かなり苦労した。
この『遠すぎた橋』と『史上最大の作戦』は、完全にミリタリーマニア向け映画だ。

公開直後、洋の東西を問わず酷評され、賞らしい賞は何も得られなかった本作。
それでも私は戦争映画ジャンルでナンバーワンに挙げたい!
◆製作費分野でナンバーワン
◆主役級俳優の質と量でナンバーワン
◆リアリティー追求でナンバーワン
「戦争映画の三冠王」と呼ばせていただきたく。

評論家や観客の大多数は、「いや、わかりにくすぎやろ」と不満を感じたわけだが、私に言わせれば、「わかるまで見ればええやん」なのだ(笑)

監督のリチャード・アッテンボローは、名作『大脱走(1963年)』で準主役「ビッグX」ことロジャー・バートレッドを演じた人物だ。
後年、本作の低評価を見事にはねかえして、『ガンジー(1982年)』でアカデミー賞作品賞と監督賞を獲得した。

『遠すぎた橋』の製作費は、当時のレートで90億円。
巨額の製作費、贅沢にスターをキャスティングしただけに公開前から話題性は十分で、興行的には余裕の黒字だったようだ。
しかし、当時のお金で90億円、領収書だけでも大変な量だったに違いない(笑)
いったい、何に使ったのか?
答えは、ギャラと兵器・被服などミリタリーグッズだ。

当時のパンフレットで「14大スター」と紹介された主だった出演者だけピックアップしても、

◆ロバート・レッドフォード『明日に向って撃て!』
◆ジーン・ハックマン『フレンチ・コネクション』
◆ローレンス・オリヴィエ『ハムレット』
◆ライアン・オニール『ペーパームーン』
◆エドワード・フォックス『ジャッカルの日』
◆エリオット・グールド『M★A★S★H マッシュ』
◆マイケル・ケイン『アルフィー』
◆ダーク・ボガード『ベニスに死す』
◆ショーン・コネリー『007シリーズ』
◆ジェームズ・カーン『ゴッドファーザー』
◆アンソニー・ホプキンス『八点鐘が鳴るとき』
◆ハーディー・クリューガー『バリー・リンドン』
◆マクシミリアン・シェル『オデッサ・ファイル』
◆リブ・ウルマン『叫びとささやき』

多すぎますって(笑)

ちなみに最高額のギャラを得たのは、米第82空挺師団第504連隊第3大隊長クック少佐を演じたロバート・レッドフォードで、6億円だったと言われている。

戦闘シーンや膨大な車輌、兵器類もCGではない。
ホンモノかホンモノを擬したハリボテだ。
そりゃあ、カネがかかるはずだ。

次に、リアリティーに関して。

迫真の戦闘シーンや隙のない所作を再現できたのも、現代では考えられない理由がある。
英第1空挺師団長アーカート少将を演じたショーン・コネリー自身、実際の「マーケット・ガーデン作戦」に従軍していたのをはじめ、出演者やスタッフに戦争経験者がワンサカいた上に、同作戦に参加した将官・尉官クラスにも存命者が多数おり、本作の撮影に協力したからだ。

登場人物の一人である元将軍(公開時には亡くなっていた)の妻から「夫をあんな無能な人物に描くなんて!」と強硬なクレームがあったり、作戦発起人のモントゴメリー元帥が映画に現れないのは、健在だった元帥本人に忖度したからと言われている。

第二次世界大戦をこのレベルで描ける戦争映画は、もう作れない。

まだ見たことない、という方は
175分という超大作だが、ぜひ、繰り返し(笑)見てホンモノの戦争映画を感じてほしいのです。

Haihai