「アイロニー的テーマが痛烈」血と砂(1922) たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アイロニー的テーマが痛烈

2022年5月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞。

本作の監督はフレッド・ニブロとされているが、ドロシー・アーズナーも演出に参加しているので観に行った。(ノン・クレジット)
また、この映画はIVCからDVD発売されているが60分表記だが、今回の上映では1時間46分だったこともあり、シネマヴェーラ鑑賞。

スペインの闘牛士になった男が、栄光と実力そして可愛い妻を手に入れるが、上流社会の悪女の毒牙にかかって身を滅ぼしていく……というノワール的なサイレント映画。

スペインのセビリアを舞台として、闘牛士を目指す青年ホアン(ルドルフ・ヴァレンチノ)は幼馴染の可愛い女性カルメン(ライラ・リー)に惚れている。
踊りと音楽の場面では、カスタネットの音がスペインらしい感じ。
そうした社交場で、ホアンは女性にモテるのだが「女は嫌いだ。一人を除いて…」とカルメンへの一途さを見せる。
そして、ホアンは闘牛で牛に殺された友人の復讐として、その牛を倒したあたりから人気急上昇。彼は、カルメンと結婚する。結婚披露宴でのカルメンは可憐なファッションを見せる。
そんな幸せなホアンが、「死んだ友人の母親と出会う」・「窓から外を見たら葬式している」などの凶事が続いて「嫌な予感」をしていた時、【平穏を壊す女】=ドナ・ソル(ニタ・ナルディ)と出会ってしまう。
その女に誑かされたホアンは「2人の女性を愛する男」になってしまったのだが……。
この後は長くなるので、割愛。

この映画では、「人をたくさん殺してきて指名手配中の盗賊」と「牛をたくさん殺して栄光を得る闘牛士」は基本的に同じ人種ではないだろうか……といった描き方をしているあたりが、洞察深い描き方がされていて面白い。
また、彼らを対比するように描いた終盤も見事。

しかし、残虐さを好む真の獣は、闘牛を観に来る観客たちだ…という痛烈なテーマが心に残る。
アイロニー的テーマが痛烈なサイレント映画の佳作。

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たいちぃ