痴人の愛(1934)

解説

「秘密」「永遠に微笑む」のレスリー・ハワードが主演する映画で、「雨」の作者サマーセット・モーム作の小説を「人生の行路」「砂上の摩天楼」のレスター・コーエンが脚色し、「砂上の摩天楼」「世界と其の男」のジョン・クロムウェルが監督し「若草物語(1933)」「猟奇島」のヘンリー・ジェラードが撮影した。助演者は「失踪者三万人」「舗道の三人女」のベティ・デイヴィス、「若草物語(1933)」のフランセス・ディー、「狂乱のアメリカ」のケイ・ジョンスン、「肉弾鬼中隊」のレジナルド・デニー及びアラン・ヘール、レジノルド・オウエン、レジナルド・シェフィールド等である。

1934年製作/アメリカ
原題:Of Human Bondage

ストーリー

上品で敏感な学生ピリップ・ケアリーは右足が不自由であった。彼は学校の近くの料理店の給仕女で、下品な利己主義のミルドレッドに不思議な愛着を感じた。彼女は障害者の彼を頭から蔑視したが、彼が小遣銭に不自由しないのを知ると、急に彼を虜にしてしまう。そのためにフィリップは試験に落第し、彼女に結婚を申し込んだが、彼女はそれを拒絶し、下等な外国人ミラーと関係して出奔する。失望したフィリップに女流小説家ノラに恋されて幸福な安穏な勉学生活が出来るようになった。ところがミラーはミルドレッドが身重になったと知るや、無情にも打ち捨てて全然顧みない。泣きつかれてフィリップはミルドレッドが産をし、生まれた赤ん坊を里子にやるまでの面倒を見てやった。ノラは失望してフィリップとは別れてしまった。かうまで親切を呈したが、ミルドレッドはフィリップの同級生グリフィスの情婦となって彼に再び苦杯を嘗めさせた。その後、フィリップは病院で近づきになった近郷の田舎紳士アセルニーの娘サリーと愛し合う仲となるが、彼はミルドレッドの事を考えると、思いきってサリーに結婚を申し込む勇気は無かった。果たして、ミルドレッドがグリフィスに棄てられ、赤ん坊を抱いて路頭に迷っていると知るや、やはり自分の部屋に引き取って世話をしないではいられなかった。所が些細な口論の結果、3度ミルドレッドは出奔した。しかもフィリップの学資たる公債投書を全て焼き捨てて。このために彼は退学した。その時ジェコブス教授が手術をして彼の不具の足を癒してやった。そしてアセルニー邸に寄食し、百貨店に勤める身となった。またミルドレッドは彼に救いを求めた。赤ん坊は死んでしまい、売笑生活の報いか彼女は肺を病んでいた。フィリップは幾許の金子を残して帰った。その後叔父の遺産を貰って再度入学した彼はついに大学士となった。そして豪州航路線の船長となり、赴任しようとするとき、ミルドレッドは施療病院で淋しく死んだ。初めて開放された気持ちになったフィリップは船長を勤め、サリーと結婚し晴れやかに人生にスタートしたのである。

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映画レビュー

4.0ベティ・デイヴィスが悪辣ヒロインを熱演

2024年4月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ベティ・デイヴィスが悪辣なヒロインを演じて一躍有名になり、思惑どおり彼女の転機となった作品。これ以降、演技派の大女優への道をいくことになる。

医学生のフィリップ(レスリー・ハワード)が偶然見かけたメイドのミルドレッド(ベティ・デイヴィス)を好きになるが、ミルドレッドは他の男との関係が絶えず、お金に困った時だけフィリップを頼るヒドイ女。ただ、フィリップも好意を寄せてくれる他の女性に出会うものの、ミルドレッド好きを引きずる。このズルズルいく関係がドラマの中心だが、こうした史上最低最悪のヒロインを見事に演じたベティ・デイヴィスは大したものである🙌

原作はサマーセット・モームの『人間の絆』であるが、この映画化にあたっては「自分のイメージを悪くする役」を演じたがる女優がおらずヒロイン役が不在だったそうだが、ベティ・デイヴィスが希望して演じた。
彼女の名前を付けた「♪ベティ・デイヴィスの瞳」という歌が1980年代に流行ったが、ベティ・デイヴィスほど「瞳で演技できる女優」はなかなか居ないだろう。

しかし、邦題つけた映画会社は酷いタイトルにして残念である。モーム原作どおり『人間の絆』で良かったのではなかろうか……😵

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たいちぃ

4.0【90年前の映画を2023年に観れる僥倖感に浸る作品。男って昔から・・。今作は、生来の浮気性であるヒロインを演じたベティ・デイヴィスの出世作だそうである。】

2023年12月18日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■画家を諦め、医学校に入学したフィリップ(レスリー・ハワード)。
 勉学に励んでいた彼はある日、喫茶店の娘・ミルドレッド(ベティ・デイヴィス)と出会い恋に落ちる。
 だが次第に生活は乱れ、試験にも落第。
 浮気性のミルドレッドはフィリップのもとを去るが、ひょんなことから再会し、ヨリを戻してしまう。

◆感想

・西洋、東洋を問わず、男って淫蕩な女性に惹かれるのかなあ・・。(嘆息)

・今作は、サマセット・モームの原作を基にしているそうであるが、谷崎純一郎の「痴人の愛」と可なり被っている所が、上記のレビューを想起させるのである。

<画質が粗くとも、若きベティ・デイヴィスの美しさが伝わってくる作品である。彼の大女優はこの作品から、スターダムへ駆け上って行ったんだねえ・・。
 歴史的に観ても、貴重な作品であると思います。>

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NOBU

3.0シャンパン飲むときの上目遣いのこれぞ『ベット・ディヴィスの瞳』のデカイ目!

2022年4月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

①あまりに酷い女の役なので誰も演じたがる女優がいなくて、「それじゃアタシが…」ということでベット・ディヴィスが演じて大好評になり大スター・大女優への道を開いた(どうしてもミルドレッド役がやりたかったので、ワーナー所属ながらRKO映画に出て、大評判になったため、ワーナーの社長が機嫌を損ねアカデミー賞主演女優賞を取らせないように裏から手を回した、というのも有名な話)ハリウッド映画史に残る映画だが、私にはもうひとつピンと来なかった。②“予想していたほど酷い女ではないじゃないか”というのと、矛盾するようだが、フィリップがあれほど入れ込むのが理解できないのとで、何のこっちゃというのが鑑賞後の正直な感想。③ベティ・ディヴィス、若い頃は結構可愛かったじゃん、という印象。ただ、シャンパングラス越しにあのギョロ目でフィリップを見る表情だけで(2シーンあり)、“目ぇ、デカ!”という強烈な印象と同時に確かにミルドレッドという女の卑しい本性を良く表現していたと思う。だんだん荒んできてからが本当の演技の見せ場で、フィリップに「むかつく女だ(You disgust me)」と言われてブチキレるシーンで鬼女のような面相で悪口雑言の限りを尽くすところは、現在の映画では珍しくないが、確かに当時のハリウッドでは若い女優がこんな演技をするのは衝撃的だっただろう。「あんたとキスした後はいつも口を拭いてたんだよ!」とジェスチャー混じりで罵るところも有名。死ぬ前のボロボロになった姿も当時のハリウッドの若手女優は絶対にしたくなかっただろうな、というメーク。そういう意味ではやはりベティ・ディヴィスはパイオニアだったんだとは思うが、映画の出来はまた別の話。④なお、フランシス・ディーは現在でも充分通用する可愛さです。

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もーさん

3.0ビッチっぽい美女にメロメロになる医学生フィリップ。寝ても覚めても彼...

2021年3月3日
iPhoneアプリから投稿
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